ホームレス過去最少のなぜ?「若者の貧困」の実態 寝られる場所の激減、ネットカフェを転々……

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毎週土曜日に新宿都庁下で行っている食料品配布の様子(提供/認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)

厚生労働省によると、全国のホームレス(路上生活者)の人数は2023年1月時点で調査開始以降最少に。しかし、相次ぐ物価上昇、貧困の深刻化を多くの人が実感できる現状で、この数が実態を反映しているのかは疑問が残る。福祉の現場では、一体何が起こっているのだろうか。

当記事は、AERA dot.の提供記事です

Aさん(20代男性)は定住先をつくらず、インターネットカフェなどに寝泊まりする、いわゆる「ネットカフェ難民」だ。だが、街を歩く若者と変わらない、清潔感ある服装に身を包んだその姿からは“住所不定の人”であるとはとても想像しがたい。

Aさんは派遣会社に登録しており、週3日勤務で月額12万円前後を稼ぐ。臭いや汚れは上司や同僚との関係を悪化させかねないほか、そもそも面接を通過することすら困難になる。彼らにとって清潔感のある身なりはまさに“命綱”。いくら生活が困窮していようとも、費用を捻出せざるを得ない。

こうしたAさんのような人たちは、ホームレスに数えられない。

路上で寝られる場所は激減。多様化するホームレスたち

厚生労働省はホームレスの実態を把握するため、2003年から全国調査を実施。23年1月時点で全国のホームレスの人数は3065人(前年比11.1%減)が確認され、調査開始以降最少となった。

しかし、調査方法は日中に自治体の担当者が路上や公園、河川敷などを「目視」で確認しており、調査時にその場に居ない人は含まれない。そのため実際の数はもっと多いといわれており、実態を正確に反映しているのか、疑問が残る部分もある。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの代表理事、大西連氏はこう話す。

「我々のようなホームレス・生活困窮者の支援団体が夜間に調査すると、路上生活者の数は2、3倍に膨れ上がることは長年指摘されてきました。ただし、それを差し引いても、路上生活者の数が年々減っていることは肌で感じています」

大西氏によると、路上生活者の数が減少した一つの要因は、自治体による取り組みの成果だ。巡回相談や生活保護制度のほか、民間団体の活動といった支援の輪が少しずつ広がっていると考えられる。

ただし、これはポジティブな見解であり、一方でネガティブな見方もできる。

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