アリババ会長電撃交代「次期トップ」は何者なのか 創業期の「ジャック・マー」を救った彼の凄さ

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マー氏と歩調を合わせるようにアリババからフェードアウトしているように見えたツァイ氏の会長就任を予想する声はほとんどなかったが、予兆はあった。

今年5月、グループの物流事業を手掛ける「菜鳥(ツァイニャオ)事業」の会長にツァイ氏が就くことが発表された。同部門は分割された6事業の中で最も新規株式公開(IPO)に近いとされ、アリババグループもIPO検討を承認している。同部門以外でも、グループの稼ぎ頭であるECを手掛ける「タオバオ・天猫事業」を除く4事業は外部からの資金調達やIPOを模索することができ、アリババグループ全体で、「福の神」ツァイ氏の手腕が再び必要になったと見られている。

グループのCEOに就くウー氏の経歴も興味深い。創業メンバーの「18羅漢」である同氏は、マー氏がアリババ創業前の1996年に立ち上げたHP作成会社「イエローページ(中国黄頁)」時代から行動を共にしている。

マー氏が翌1997年に中国政府の公務員に転職したときも、一緒に北京について行った。

アリババ創業メンバーの中では貴重なエンジニアでもあり、決済システム「アリペイ」など重要事業の最高技術責任者(CTO)を歴任。2015~2019年はアリババグループの主席特別秘書として会長のマー氏を支えた。今回の企業分割でウー氏は祖業であるEC「タオバオ・天猫事業」の会長に就任した。9月以降はグループのCEOと兼務することになる。

公的活動再開したジャック・マー氏

予想外の人事ではあるが、各事業の運営から一線を引きグループ全体の投資戦略や調整を担う会長・CEO職は、創業時から在籍しそれぞれ財務、技術のスペシャリストである2人が適任であるとの声は少なくない。適材適所の評価の一方で、2人の背後に2019年に会長を退任したジャック・マー氏の影がちらつくのも確かだ。

グループのトップ交代が発表される直前、中国メディアの「晩点 LatePost」がスクープとしてマー氏の社内での発言を報道した。報道によるとマー氏は5月下旬、「タオバオ・天猫事業」の幹部を集め、小規模の交流会を開いた。

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