アリババ会長電撃交代「次期トップ」は何者なのか 創業期の「ジャック・マー」を救った彼の凄さ

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アリババは今春、グループを6事業に分割する組織再編に乗り出し、チャン氏はクラウドインテリジェンス事業のCEOに就任した。

クラウドサービスや人工知能(AI)、研究開発機関のDAMOアカデミー(中国語:達摩院)が属する同部門のグループ売上高に占める比率は直近で8%前後だが、生成AIに代表されるようにクラウドやAIは技術革新の要であり、米中のメガテックが競う激戦分野だ。

チャン氏は11月11日のネットセール「独身の日(ダブルイレブン)」を発案するなど、アリババのEC事業を飛躍させた。実務能力に突出する同氏が、「持ち株会社」に役割を変えたグループのトップから退き、次の激戦地であるクラウドインテリジェンス事業のCEOに注力するのは、合理的な判断だ。

ただし、後任人事はサプライズだった。会長に就任するツァイ氏はマー氏と同時期にアリババの経営から一線を引いており、最近は米プロバスケットボール協会(NBA)のチームのオーナーとしての活動が増えていた。

年収1億円の役職辞し、月給1万円のCFOに

ツァイ氏がアリババにもたらしたものは数知れないが、最大の貢献は、創業期の「死の谷」からマー氏を救ったことだろう。マー氏なくしてアリババは生まれなかったが、アリババを会社として安定させたのはツァイ氏にほかならない。

英語教師から起業家に転じたマー氏は1999年3月、後に「18羅漢」と呼ばれる創業メンバーから資金をかき集め、企業間取引プラットフォーム「Alibaba.com」を立ち上げた。金策に奔走する中、面識を得たのがイェール大学で学び北欧の投資会社のアジア地区責任者を務めていた台湾系カナダ人のツァイ氏だ。

ツァイ氏はマー氏の住居兼事務所だった杭州市内のアパートを訪れ、彼のリーダーシップと若者たちが生き生きと仕事をする雰囲気に引き付けられた。

2人でボートに乗って西湖を遊覧しているときに、ツァイ氏から「自分もアリババに加わりたい」と申し出を受けたマー氏は、ボートから湖に飛び込まんばかりに喜んだが、瞬時に現実に戻り、「うちにはお金がない。あなたにも毎月500元(約1万円)しか払えない。それでは申し訳なさすぎる」と答えた。それでもツァイ氏の気持ちは変わらず、同年夏、彼は年収70万ドル(約1億円)の職を辞してアリババ19人目のメンバーになり、財務を統括するCFOに就任した。

アリババが会社として登記をしたのは同年9月10日。これもツァイ氏がマー氏らに会社や株式についてレクチャーし、会社設立を主導したと言われる。

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