アリババ会長電撃交代「次期トップ」は何者なのか 創業期の「ジャック・マー」を救った彼の凄さ

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それまで40回近く出資を断られていたアリババの資金調達は、ツァイ氏を得て一気に道が開けた。

同年10月、ツァイ氏の旧友を通じ、ゴールドマン・サックスを筆頭に日本の投資企業やツァイ氏が数カ月前まで籍を置いていたInvestor ABなどから500万ドル(約7億円)の出資を受けた。

運転資金に加え、「ゴールドマン・サックスが出資した中国の有望ITベンチャー」というブランドを獲得したアリババには次々に追加出資の話が舞い込むようになり、アジアで有望な投資先を探していた孫正義率いるソフトバンクの目にも留まることとなった。

2000年1月、ソフトバンクはほかの5社と共同で、アリババに2500万ドル(約35億円)を出資。この決断が両社の繁栄の礎になったことは、今では多くの人が知るストーリーだ。

ツァイ氏はその後もアリババのCFOとして、米ヤフーとの提携、Alibaba.comの香港上場を主導した。著名投資家のジム・ロジャーズは当時、「アリババのチームは、ものすごくよくできている。全くタイプの違う2人がいたから、成功したとも言える。ジャック・マーがアイデアを次々に出し、ジョセフ・ツァイが具体化していく」と評した。

ツァイ氏は現会長兼CEOをアリババに招いた

グループの現会長兼CEOのチャン氏を2007年にアリババに招いたのもツァイ氏だと言われる。

マー氏がアリババグループのCEOを退任した2013年、ツァイ氏もCFOを退いた。その後も副会長兼戦略的投資部門のトップとしてアリババのアメリカ上場などを手掛けたが、2010年代後半になると少しずつアリババの株を売却し、マー氏が会長を退任した2019年に、戦略的投資部門のトップを降りた(副会長は続投)。

ツァイ氏がアリババの次に目をつけたのはスポーツビジネスだった。2018年にNBAに所属するブルックリン・ネッツの株式の49%をロシアの富豪から取得し、翌19年には株式の残りの51%を買い取って単独オーナーに就いた。

買収総額は合計23億5000万ドル(約3300億円)と推測されている。自身が学生時代にラクロスの選手だったことから、アメリカのラクロスチームも取得し、アメリカのスポーツビジネスで存在感を高めていた。

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