「となりのトトロ」誕生秘話とジブリ苦闘の歴史 公開を反対され、スタッフ確保に奔走もした

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となりのトトロ
1988年に公開されたアニメ映画『となりのトトロ』。封切りまでに紆余曲折ありました(©1988 Studio Ghibli)
2023年7月14日より、宮﨑駿監督の新作映画『君たちはどう生きるか』が公開されます。これまで数々の名作映画を生み出してきたスタジオジブリ。その中でも、年代を問わず長く愛されてきたのが『となりのトトロ』です。
今だから明かせる制作秘話と当時のスタジオジブリを取り巻く状況について、スタジオジブリ代表取締役でプロデューサーの鈴木敏夫氏が責任編集した新著『スタジオジブリ物語』より一部抜粋、編集のうえ、お届けします。

最初は難色を示された「トトロ」

『天空の城ラピュタ』の成果を踏まえ、宮﨑駿監督による新たな作品の準備が始まったのは1986年秋。宮﨑が描いた1枚のイメージボードに鈴木敏夫が着目し、映画化を提案したことがきっかけだった。

そこに描かれていたのは、雨のバス停で傘をさして父を待つ女の子と、頭に大きな葉を乗せて立つトトロ。宮﨑にとっては、テレビのスペシャル番組の構想の1つとして描いた絵だったが、1970年代後半から温めていた企画でもあったという。

その物語は、まだTVが普及する以前の東京の郊外を舞台に、そこに引っ越してきた女の子と、森に住むふしぎなおばけの「トトロ」との交流を描くというもの。ちなみに「トトロ」のイメージボードは、1983年3月に出版された『宮崎駿イメージボード集』や、『アニメージュ』1983年9月号の付録「風の谷のナウシカ/宮崎駿イメージボード集」として既に世に出ており、一部のファンにはその存在は知られていた。

しかし『となりのトトロ』の企画は、スタジオジブリの親会社である徳間書店から難色を示された。企画そのものが地味で、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』という「宮﨑駿=SF活劇」という路線とは大きく違う企画だったのも、主な理由の1つだった。徳間サイドからは、映画ではなくビデオ企画ならばOKを出してもよい、という提案もあったそうだが、鈴木はあくまで映画化にこだわった。

次ページ別作品との2本立て興行であれば、説得できるのでは
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