「私は義務教育を受けていないので、テストのためにしぶしぶ勉強をしなければならないといったような勉強のネガティブなイメージが、そこまでありませんでした。中学以降、論理的に考えられるようになってから受験勉強をしたので、自分の興味を追求しつつ、楽しみながら学べたことが大きかったと思います」
現在、内田さんは作曲家・アーティストとして曲を提供したりCDを作ったりする傍ら、藝大の大学院に進んで、現代アートの研究を続けています。作曲という分野にこだわらずに芸術作品を生み出せる教養を身につけようとしています。
「コロナ以降、精神的に追い詰められていたことや、無理して頑張り続けていたこともあって、大学卒業間近に鬱状態になってしまいました。そうして大学を卒業した後、数カ月間は泣いたり寝たりの生活を繰り返していました。
徐々に貯金も減ってきて、半ば自暴自棄になりながら肉体労働のアルバイトに申し込みました。重たいコンテナを何時間も運ぶ仕事をした後、帰り道、自分はなんのために生きているんだろうと考えながら、憂鬱な気持ちでとぼとぼと歩いていたその時、突然自分の人生がフラッシュバックしたんです。
自分は進んで学校に行かなかった人間なので『不登校』ではありません。でも、高校などで一般的な不登校を経験した人たちと交流をしていたときに、幼少期に人と異なる人生を送ってきた人の多くは自己肯定感が低いと感じたのです」
自己肯定感が低い人達に寄り添える作品を作りたい
「一方で、藝大は裕福で自己肯定感の高い人が多いことにギャップを感じました。自分も裕福な家庭ではありませんでしたが、やりたいことを続けることができたので、自分を大切にして、生きることができました。
こういった人生を送ってきた自分だからこそ、そうした将来が暗いと思い悩んでいる人たちに、アートを通して寄り添うことができるのではないかと思うようになったんです。そのために必要な知識を学ぶために、今度は藝大の美術の大学院で、音楽だけに限らない、芸術のあり方や表現について学ぶことに決めました」
学校に行かなかったことや、二度の浪人経験が、彼の物事に対する視野を広げ、大勢の人を思いやることのできる力を身につけさせたのだと思いました。
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