女性が男性に「下の名前、何ていうの?」と聞いたのは、明らかにルール違反。しかもその口調が、あまりにもぶしつけで馴れ馴れしかったので、男性はその様子に苛立ちを覚えたのだろう。
それで、「お見合いで下の名前を教えるのは、交際になってからですよね」という不愉快そうな返答になった。すると、今度は女性が気分を害してしまった。
女性が、“ハ〜ッ”と大きなため息をついた。そして、小声でつぶやいた。「なんか、サイアク」。
すると、男性がさらに苛立った低い声で言った。「あなた、ずいぶん失礼な人だな」。
彼女も負けていなかった。「もう今日はお見合いしなくていいよね。お見合いはしたことにして、相談室にはお断りを出してよ」。
こう言うと、彼女は列から離れて、早足で出口のほうに向かい帰ってしまった。彼も列から離れ、出口とは反対のトイレに向かって歩いていった。
その一部始終を私と一緒に見ていた男性会員が苦笑いしながら言った。「僕の今日のお相手は、あんな失礼な女性でないといいのですが」。
まもなく彼のお見合い相手の女性が来たのだが、彼女は、彼の苗字を尋ね、自分の苗字を名乗り、私に「お仲人さんですか? わざわざお立ち合いありがとうございます」と、丁寧に頭を下げてあいさつをした。
社会人としてどうかと思う
お見合いでは、敬語や丁寧語で話すのが基本だ。たまに友達口調で話す人がいる。本人はフランクに話すことで、相手と距離を縮めようと思っているのだろうが、これは逆効果だ。
「今日の方、すごく馴れ馴れしかった」
「敬語や丁寧語が使えない人って、社会人としてどうかと思います」
そんな理由から、相手から交際見送りの返事をもらうことになる。
お見合いは、未来の伴侶を見つけるための出会い。しかも初対面なのだから、敬意を払う意味を込めて、敬語や丁寧語で話したほうがよいのだ。
だが、お見合いから交際に入り、3回、4回と会っているのに、ずっと敬語や丁寧語を崩さない人がいる。それはそれで他人行儀な感じが続き、2人の距離が縮まらない。
ふみ(34歳、仮名)は、のぶゆき(37歳、仮名)と仮交際に入り、4回目のデートを終えたときに、のぶゆきの相談室から「真剣交際に入れませんか?」という打診があった。そのことを伝えると、ふみは言った。
「まじめな方で尊敬できる。悪いところはないんですけど、何度会っても2人の距離が縮まらない気がしているんです。それは、のぶゆきさんの話し方にあると思う。丁寧語を崩さないし、私ことを山下さん(仮名)と苗字で呼ぶんです。こういうのって、どのタイミングで言ったらいいんでしょうか?」
苗字で呼ぶか下の名前で呼ぶかで、2人の距離感は違ってくる。下の名前で呼び合ったほうが距離はより近くなるし、名前に“さん”をつけるのではなく、呼び捨てにしたり、ニックネームで呼んだりすると、より親しさが増す。
そこで、私はこんなアドバイスをした。
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