
「桜桃忌」の元ネタとなった短編小説『桜桃』
6月19日は「桜桃忌」と呼ばれている。桜桃とはさくらんぼのことなのだが、なぜこんなふうに呼ばれているかといえば、太宰治の好きな食べ物だったからだ。そう、6月19日は太宰治の墓前にさくらんぼが大量に供えられる日なのである。
実は太宰治の命日そのものは6月13日。入水したのは13日なのである。だが遺体が発見されたのが19日であり、太宰と親交のあった作家がこの日を「桜桃忌」と名付けたために、19日のほうが有名になったのだ。
太宰治にちなんで、今回は「桜桃忌」の元ネタとなった小説を読んでみよう。
短編小説『桜桃』は、こんな文章から始まる。もしかしたら『桜桃』を知らなくとも、冒頭のフレーズだけ聞いたことがある方もいるかもしれない。
なぜこんな文章を太宰は書いたのか? それはもちろん、実際は「子供より、親が大事」なんてことはなく、現実は「親よりも、子供が大事」に決まっているからである。少なくとも彼が生きていた時代は、そうだった。文章はこのように続く。
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