在日コリアンの日常に映る「北朝鮮」の重い影 映画監督で在日2世のヤン ヨンヒさんに聞いた

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――ヤンさんの作品では、写真が鍵になっています。『スープとイデオロギー』では近所の写真館で撮ってもらった、夫のアライさんとの結婚記念写真が印象的です。ご両親の家にはたくさんの写真が飾られていましたが、ヤンさんご自身は家の中に写真を飾ったりされるんですか?

私は、嫌いなんです。いまは母の遺骨があるので、母の写真だけはありますが。母は「もう写真館かよ」というくらい、写真を飾ることを楽しみにしていて。その反動なのかもしれません。

写真って一瞬だけニコッと、ぜんぜん幸せでないひとも幸せそうなフリをするでしょう。嘘っぽいよなあというのがあって。

北朝鮮の写真集をたくさん見せられた

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――「一瞬のフリ」ですか?

朝鮮学校に通っていたころに、北朝鮮の写真集をたくさん見せられたんです。ある意図で撮られた、一瞬。そんなのを見て「この国は素晴らしい」なんて言えるのか、っていう警戒心があるんだと思います。ただ、夫の影響でこのごろ、食べ物の写真を撮るようにはなりました。

――プロデューサーでもあるアライさんの影響で?

夫は、自分が撮られるのは嫌だという人なんですが、写真をたくさん撮るんです。毎朝、私の変わり映えしない顔を撮るので、同じものを撮って何するの?と聞いたら、「日めくりカレンダーがつくれる」とアホなことを言っているんですよね。

【取材後記】本書のオビを取ると真っ青の表紙。ヤンさんが幼いころ、「 帰国事業(「在日」の人たちの北朝鮮への移住を促す運動が1959 年から20数年間続けられた)」で新潟の港から「北」に渡った兄たちとの別離を想起してしまうから、「青」は嫌だったそうだ。いまトラウマは消え、取材日も青のジャケットを着てきた。「家族」のドキュメンタリーは「三部作」で終え、構想している次作はフィクションになる。日本、韓国、北朝鮮を舞台とするものだという。
朝山 実 インタビューライター

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あさやま じつ / Jitsu Asayama

1956年生まれ。著書に『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』(中央公論新社)。ほかに『イッセー尾形の人生コーチング』『父の戒名をつけてみました』『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』など。

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