在日コリアンの日常に映る「北朝鮮」の重い影 映画監督で在日2世のヤン ヨンヒさんに聞いた
母は10代の頃に疎開や「四・三事件(1948年、朝鮮半島が南北に分断される中で起きた韓国軍・警察による済州島島民虐殺)」があって勉強ができなかった。だから、私の進学に対しては「勉強できるんやったら、やっといたほうがいい」と応援してくれました。
初めて北朝鮮を訪問したヤンさん
――本には、ヤンさんが高校生のときに訪朝団と一緒に初めて北朝鮮を訪れた際のエピソードが綴られています。周りが金日成の銅像にお辞儀をしている中、ひとりだけ、ぼうーっと銅像を見ていたら、背後から頭を押さえつけられた。しばらくして振り返ると、その姿はなかったと書かれていますね。
うちの親はそうした強要をしなかったから、グレずにこれくらい伸び伸び育ったのだと思います(笑)。
――次兄の末娘ソナさんを主人公にした映画『愛しきソナ』(2009年製作)のデジタル・リマスタリング版も劇場で公開されています。「マスゲーム」は、ニュース映像などでよく目にする光景ですが、あの塊の1人ひとりにもソナの家族同様、生活と葛藤があるのだなと思いながら観ました。
『愛しきソナ』の、あの広場の端っこにいる人たちは、ただもう走っているだけ。あまりに広すぎて。衣装も「あれ洗濯しているのかなあ」という。遠目には鮮やかなチマチョゴリですが。
私は「もうこんなに走らせて、お弁当とかもらえるんだろうか」とそっちばっかり気になって見ていました。でも隣で母は「すごい、すごい」と拍手している。「あの人たち、シャワーも浴びれないんでしょう」と言うと、母は「あんたはイチイチうるさい!!」とムッとしていました。
――お母さんは、肯定的に見ているということですか?
母は北朝鮮がこう見てほしいというふうにだけ見て、それ以外はシャットアウトしてしまう。拉致問題のニュースが出たときも、母はテレビをすぐに切ってしまうか、どこかに行ってしまう。そうでないと母は、もたなかったんでしょうね。
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