スシロー、賠償請求も「非常識少年」また出る必然 炎上の専門家「想像力のない人にSNS時代は酷」

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筆者としては、スシローのみならず、回転寿司チェーン、ひいては外食業界全体に与えた影響を考えると、この請求額が法外だとは感じない。

5月12日に出た「2023年9月期 第2四半期報告書」によると、スシローは国内で655店舗(うちテイクアウト専門17店舗)。騒動以降、店舗では「レーン上は注文品のみにする」「食器・調味料の交換」「アクリル板の設置」など様々な対応が行われており、これらの対応だけで相応の費用がかかると推測されるからだ。

一方、SNS上では、「数千万円規模の請求」が報じられたことで、その是非について、「社会的制裁を負うべき」「やりすぎではないか」といった議論が起きている。ネット掲示板・5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)には「ただの少年に6700万円を請求したスシロー、流石にクソ叩かれるwwwwwwwwwww」と題するスレッド(話題ごとの投稿群)が立てられ、これを元にした「まとめサイト」の記事が拡散されることで、さらなる注目を集めた。

SNS時代は「可燃性に満ちた時代」だ

議論が深まるなかで、一部のネットユーザーからは、この事案を「見せしめ」(一応触れておくと、これは筆者の意見ではなく、ネットユーザーの言葉だ)にすることで、再発防止をねらっているのでは、との指摘も多々見られる。

しかし、これまでネットメディアをながめてきた経験から言えば、おそらくさほど抑止効果はないだろう。すぐに新たな「やらかし」が起こるはずだ。

なぜこのように考えるか。それは現代のSNS時代が「可燃性に満ちている」からだ。

筆者は当サイト(東洋経済オンライン)のコラムで、たびたび「令和の炎上テンプレ」として、以下の3要素をあげており、スシロー事案にも当てはまると指摘してきた。

(1)技術革新によって断ち切られた文脈:SNSの台頭によって、ネット上から「文脈」が断ち切られてしまった。その結果、過去の炎上事案を知らない層の厚みが増している
(2)インスタとツイッターといったサービスによる文化の違い:SNSが成熟し、サービスごとの文化(カルチャー)の違いが生まれた。その結果、言動が「異なるニュアンス」で受け取られ、過激化・先鋭化してしまう場合がある
(3)仲間内と世間での価値観の違い:SNSが身近な存在になりすぎた結果、「第三者に見られたり、転載される可能性がある」という危機意識が薄れた。その結果、非常識な内輪ノリの行動を、そうだと気づかずに世界に公開してしまう場合がある

「令和の〜」と名付けたのは、2010年代前半に相次いだ、コンビニ冷蔵庫にもぐりこむなどの「バカッター」「バイトテロ」とは若干性質が異なるからだ。

次ページ最近の「炎上事案」は3要素のかけ算で広がっている例が多い
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