マイナ問題「利用規約」記された見過ごせない中身 特に重要な4項目をジャーナリスト堤氏が解説
ショックを受けた国民が預金を引き出そうと銀行に殺到したために首相は緊急事態法を終了させざるを得なくなり、凍結は解除されましたが、図らずも、いざとなったら政府が国民のデータを使ってどんなことができるのかを、世界に示した事件だったのです。
私たち日本人は特に、あなた遅れてますよ、みなさん先に行かれましたよ、と言われると弱いところがありますが、今は海外の情報がネットでもたくさん手に入る時代です。政府とメディアがメリットだけを推してくるものほど、海外の事例をチェックしておきましょう。
何もかもデジタル化することは、場所を取らずスピードも上がって便利な反面、セキュリティ面では最悪です。自然災害で、通信が遮断されてしまう状況もしょっちゅう起こります。
阪神・淡路大震災や東日本大震災、各地のゲリラ豪雨など、大きな自然災害があったとき、紙の保険証やお薬手帳がいかに大事かを忘れてはなりません。
アメリカでは「カードは持ち歩くな」
デジタル化に関して中国と熾烈な競争を繰り広げているアメリカではどうなっているでしょう?
アメリカには社会保障番号という一生変わらない個人番号があるのですが、まず絶対にカードは持ち歩きません。私が住んでいたときも、「カードは金庫の中だよ」という同僚が何人もいたのを覚えています。
社会保障番号が書かれたカード自体にも、2017年には、消費者の信用度を計算する信用調査会社大手エキファックスが大規模なハッキング攻撃に遭い、1億4500万人分の番号が個人情報とともに漏洩してしまった事件がありました。
流出したのは、名前と住所と生年月日、運転免許証番号と社会保障番号、そして20万9000件にものぼるクレジットカード番号です。一生変わらない個人番号は強固な身分証明になり高い値段がつきますから、あっという間に闇市場で売買されてしまいます。
アメリカ政府は番号が盗まれた人たちに向かって、「今後何年にもわたって犯罪被害に遭うリスクがあるので油断しないように」「1年間はエキファックスが提供する『なりすまし犯罪保険』を使い、2年目からは自腹で保険を更新しなさい」などの注意を呼びかけていました。
パンデミックのようなショックで、国民が思考停止になっているときは、こうした犯罪が起きやすくなります。コロナ禍のアメリカでも、やはり個人番号関連の犯罪は一気に増えました。
連邦取引委員会(FTC)によると、2020年、ニューヨーク州では個人情報盗難事件が急増し、IDを盗撮されたという苦情が6万7000件を超え、被害総額はなんと10年前の4倍以上。約2万5000人のニューヨーカーが個人番号を盗まれ、勝手にクレジットカードや銀行口座を作られてしまったのでした。
「利便性と引き換えに、一生変わらない個人番号がもたらす被害は大きすぎる」として、見直しを求める声が高まっているのです。
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