尹政権の対中姿勢は、韓国内の厳しい対中世論を背景としたものではあるが、今後も相互尊重の関係に向けた取り組みを続けるためには、何よりも中国からの「経済的威圧」に対する十分な備えが必要だと認識されている。
2017年の韓国内への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配置時に中国から受けた事実上の経済報復が、大きな教訓となっているからである。当時の文政権も、経済面での過度な対中依存を減らすことを目指しており、ASEAN、インドとの関係強化を目指して展開された「新南方政策」には、そうした意図が込められていた。
また、当時の韓国外交当局者や専門家から聞かれたのは、アメリカによる支援の不可欠性である。アメリカの要請を受けてTHAADを配置したのに、中国による韓国への威圧に対してトランプ政権は韓国を守る措置を取らなかったことへの不満がそこにはあった。
そのため、尹政権は米韓同盟の強化を進めると同時に、中国からの威圧に米韓(日)が共同対処することの保証を必要としたであろう。
問われる経済安保における不利益への対応
その観点から、昨年9月に発表された日米韓外相共同声明が、「インド太平洋地域および世界の繁栄を促進するための日米韓3カ国の協力の重要性を強調した。特に、経済的威圧を前にして、共に立ち向かう必要性に留意し、そのような行為を抑止し、これに対応するために協働することにコミットした」と表明したことは、あまり注目されなかったが興味深い事実である。
米中戦略競争の中で対米同盟を強化する尹政権にもう1つ必要なのは、経済安全保障における繊細かつ慎重な取り組みである。
例えば、半導体製造企業のサムスン電子とSKハイニックスが、バイデン政権の求めに呼応する形で大型対米投資を行ったにもかかわらず、同政権による一連の対中半導体規制を受けて、中国工場での生産が制限される恐れが出てきている。
先端半導体はアメリカで、汎用性の高いものは中国で製造するという棲み分けを図るにしても、アメリカ主導のサプライチェーンの囲い込み(フレンド・ショアリング)が進めば、中国で生み出されている韓国の経済利益が大きく損なわれることになる。
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