広島サミット影の主役・中国が描く国際秩序とは G7は「法の支配」の理念を打ち出せたのか

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中国は国際社会におけるプレゼンスを高めるための布石を積極的に打っている(写真:Qilai Shen/Bloomberg)

【連載第4回:G7広島サミットの焦点】

5月19日から21日にかけて広島で開催されたG7首脳会合では、ロシアのウクライナ侵攻に対する否定的見解を改めて示すとともに、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる発展途上国・新興国との協調を強化するための方策を示すことが期待された。

いずれのテーマにおいても、実は「中国との距離」が隠れた主要命題であった。ロシアとウクライナの調停役を中国に期待するのか、あるいは中国の経済的リスクと経済的魅力をどのようにバランスさせるのか。G7間で緊密に連携すると謳いながらも、各国の思惑は交錯している。

各国の見解を分かつのは、中国の国際的な影響力をどう評価するかという現状認識と、国際秩序のなかで中国にどのような役割を担わせるかという長期的な戦略の相違であろう。習近平政権が大国としてグローバル・ガバナンスをリードする意思と能力を強調し、幅広い外交攻勢を展開するなかで、G7サミットの戦略的着地点はどこにあったのか。

調停外交を演出する中国の思惑

対中政策においてG7諸国が足並みを揃えるためには、中国外交の実力と方向性を適切に評価する必要がある。だが情勢は流動的である。この数カ月、中国は調停外交を積極的に展開して一定の期待を集めるようになった。

3月10日にはイランとサウジアラビアの外交関係の正常化を中国が演出し、世界を驚かせた。また3月20日から習国家主席がロシアを訪問してプーチン大統領との首脳会談を実施。2月に「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」を発表していたことから、一部でウクライナ戦争においても中国が一定の仲介を担う可能性があるとの期待を呼んだ。

4月26日には習主席がゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話会談を実施して「中国は速やかな停戦と平和回復のために努力する」と述べ、5月にウクライナ、ロシアを含む5カ国へ特別代表として元駐ロシア大使を派遣した。

一連の動きは、イラン・サウジアラビア関係の仲介を成功体験として、ロシア・ウクライナ問題でも中国が役割を果たせるとの国際社会の期待を、自ら醸成することを狙ったものだろう。

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