もう1つ、中国が注力するのがアフガニスタン問題である。4月12日に中国外務省は11項目からなる「アフガニスタン問題に関する中国の立場」を発表し、この地域における「アメリカの責任」を名指しで批判、「一方的な経済制裁」や「外部勢力の関与と浸透」への反対を示した。
秦剛外相はサマルカンドでの第4回アフガニスタン近隣諸国外相会議(4月13日)、イスラマバードでの中国・パキスタン・タリバン暫定政権の外相三者会談(5月6日)に連続参加し、アフガニスタンの安定化に寄与する姿勢を示して国際世論にアピールしている。
さらに秦剛外相は5月2日、中国外相としては初めてクーデター後のミャンマーを訪問した。ミンアウンフライン総司令官と会談して「中国はミャンマーと共にある」ことを強調するとともに、隣国バングラデシュとの関係改善を支援すると述べている。
中国はヨーロッパ、中東、東南アジアの各地域が抱える問題に積極的に関与する姿勢を示している。問題解決にいたる可能性はいずれも高くはないが、中国が関与することで情勢が変化するかもしれないという「期待」を関係各国から得ることができる。つまり、国際社会における中国のプレゼンスを高めるための布石を打っていると考えられる。
中国が描く国際秩序と3つのイニシアティブ
外交攻勢をかける中国が世界ビジョンとして示すのが「人類運命共同体」であり、そのための3つのイニシアティブである。
「人類運命共同体」は読んで字のごとく、全人類のための素晴らしい未来、すなわち「持久的平和、普遍的安全、共同繁栄、開放的・包容的、クリーンで美しい世界」を構築しようと呼びかけるフレーズである。端的にいえば、世界のために尽力する中国というイメージを形成するための宣伝工作であり、目標である。
中国の論理では、「人類運命共同体」を最終目標と設定して、これを支える外交イニシアティブの3本柱がある。
それが「グローバル発展イニシアティブ(Global Development Initiative: GDI)」「グローバル安全保障イニシアティブ(Global Security Initiative: GSI)」「グローバル文明イニシアティブ(Global Civilisation Initiative: GCI)」で、順に2021年9月、2022年4月、2023年3月に習主席が自ら提起した。
さらに「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative: BRI)がこれらの具体的な実施手段と位置付けられている。
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