広島から核の国際秩序再構築に向けた行動を 「核抑止」が揺らぐ中でのG7サミットの重要性

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核抑止が揺らぐ中で開催されるG7広島サミット。債務上限問題を抱えるバイデン大統領は出席できるのか(写真:Victor Blue/Bloomberg)

【連載第3回:G7広島サミットの焦点】

G7広島サミットは、ロシアのウクライナ侵略によって国際秩序が根幹から揺らぐ中、「力による一方的な現状変更の試みや核兵器による威嚇、その使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を力強く世界に示す」歴史的な機会となる。

最初の被爆地である広島に、招待国のインドを含め、核保有国7カ国の内の4カ国(米英仏印)が会し、核兵器のない世界に向けた取り組みと現実的な核抑止の両立について意見が交わされる。ゼレンスキー大統領も岸田文雄首相の要請を受けオンラインで参加する。

ロシアによる核兵器の恫喝に屈せず、ロシアの侵略と戦っているウクライナを全面的に支持し、プーチン大統領にいかなる形であれ核兵器の発射ボタンを押させないことが必要だ。岸田首相は議長として、「ヒロシマ・アクション・プラン」をG7共通プランに位置づけ、核の国際秩序の回復に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。

核抑止の正念場

冷戦後の核兵器への関心が低下した「核の忘却」の時代は、北朝鮮の度重なる核実験やミサイル開発、中距離核戦力全廃条約(INF条約)の破棄に象徴される米ロ間の軍備管理制度の緩み、中国の急速かつ大規模な核戦力増強など、核の国際秩序の不安定化をもたらした。

2014年に一方的にクリミアを併合したロシアは、「エスカレーション抑止(escalate to de-escalate)」という戦略(核兵器の使用を含め、紛争を意図的にエスカレートさせることにより相手を萎縮させ、ロシア側が望む条件を強いる戦略)を導入し、昨年2月24日のウクライナ侵攻以降、実際にこの戦略を遂行しており、核使用の可能性は現在も否定できない。

これに対し、早々にアメリカの軍事介入を否定し、ロシアの軍事侵攻を抑止できなかったバイデン大統領だが、核使用に関しては「ウクライナで核兵器を使えば壊滅的な結果を招くぞと、極めて高いレベルでロシア側に直接、内々に伝えてある」(ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官、2022年9月25日)。

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