広島から核の国際秩序再構築に向けた行動を 「核抑止」が揺らぐ中でのG7サミットの重要性

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ウクライナがNATO加盟国ではないにもかかわらず、アメリカが報復意思を公表するのは、実際に核が使用された場合、核拡散防止条約(NPT)体制はもちろん、アメリカの核戦略・拡大抑止戦略が崩れてしまうからだ。

アメリカの報復には、ロシアからの戦略核兵器による反撃を招き、全面核戦争に拡大するリスクが伴う。しかし、アメリカが躊躇し、ロシアの「エスカレーション抑止戦略」が機能するとなれば、核ミサイルの運用能力向上を進める北朝鮮や武力による台湾統一を否定しない中国が同じ戦略を使うことが予想され、同盟国に対するアメリカの拡大抑止も重大な挑戦を受けることになる。ウクライナはまさにアメリカの核抑止が実戦で試されている正念場なのだ。

核を使用させないことの意義

核抑止の戦略は、冷戦時代から現在に至るまで戦略環境の変化や技術の発展に伴い、精緻に理論化されてきた。

核兵器の破壊力の大きさ故、存在自体が抑止力となるとする「最小限抑止」戦略から、抑止力の担保には核の使用を前提として損害限定による勝利の体制構築が必要とする「柔軟反応」戦略、さらに、お互いの脆弱性(ABM条約)を前提に核兵器を使えない絶対兵器とする「相互確証破壊(MAD)」戦略、そして「エスカレーション抑止」戦略へと至っている。

いずれの戦略もパラドックスとジレンマを包含するため、その戦略の「正しさ」は実際に核兵器が使用されていない事実の積み重ねによってしか証明できない。逆に言えば、抑止は、客観的な評価がほぼ不可能な、相手との相互的な心理作用の結果であり、いずれの理論も破綻しなければ(核が使用されなければ)、通用する机上の理論でもある。

仮にウクライナで核が使用されれば、これら机上の理論は一掃され、その後の戦争の展開も戦後の抑止理論の展開も予想がつかない事態となる。これはロシアにとっても同様だ。

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