【特集・中国の経済安全保障(第1回)】
グローバル経済の趨勢が効率性重視から安全保障重視へとシフトするに伴い、経済安全保障への関心が急速に高まっている。昨年12月のG7首脳会合が「われわれの集団的経済安全保障を強化すべく協働」すると共同声明で言明したように、いまや国際社会のパワーバランスを再構成する議論になりつつある。
主要アクターとして関心を集めながらも十分に議論されていないのが、中国の経済安全保障である。これまでは顕在化したアメリカの施策に議論が集中しており、中国の対抗策に関する分析は相対的に少なかった。しかし中国当局は、巨大な中国市場の優位性と、高い生産力に政府支援を組み合わせた供給能力の高さ(特に価格競争力)を活用し、これに各国を依存させることで経済的優勢を獲得する戦略を立てている。
また米中競争の激化により中国がより能動的に行動する可能性は高まっており、いわば潜在的な中国リスクは膨らんでいる。では中国は何をどう備えており、どのように動くと考えられるのか。本特集は1月の「アメリカの経済安全保障」特集に続き、「中国の経済安全保障」にフォーカスして現状を分析する。
中国における「経済安全」の概念
――国家安全保障の基礎として
習近平政権は2014年に「総合的な国家安全保障観(総体国家安全観)」として、政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核の11の領域にまたがる包括的な安全保障体制の構築を打ち出した。そのなかで示された「経済安全」重視は、人々の生活水準の向上を共産党政権の正統性の源泉とする方針の延長であると同時に、2015年に発表した「中国製造2025」で明らかになった製造業の高度化の目標を含意するものであった。
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