【連載第2回:中国を取り巻く国際秩序】
国際秩序構築において、新興国・発展途上国からなる「グローバルサウス」の存在はもはや欠かせない。
現在の国際秩序の正当性は、国際社会が支持するルールや規範に依拠しており、国際社会を構成する国の大多数がグローバルサウスで占められているからである。
その中でも、インド太平洋の地域大国が注目しているのが、地政学的・地経学的な要衝かつ地域多国間主義の核であるASEAN(東南アジア諸国連合)が存在する「東南アジア」だ。
中国の対東南アジア戦略
東南アジアは、単に地理的にインド太平洋の中心に位置するだけでなく、10カ国からなるASEANが存在するため、彼らの支持を得ることは地域の「多数」を取り込むことにもつながる。
そのためアメリカと中国は、自国に有利な国際秩序を構築するため東南アジア諸国を味方につけようとしのぎを削っている。この競争において中国は、地理的にも歴史的に政治・経済・社会的な影響力を持ち、外交的に優位な立場にある。
しかし、国際・地域秩序の構築に至ってはその優位性をまだ活かし切れていない。国連を基盤とした既存の国際秩序の擁護を主張し、「人類運命共同体」といった標語を広めてはいるものの、過去の地経学ブリーフィング(「広島サミット影の主役・中国が描く国際秩序とは」、「中国の「人類運命共同体」構想にどう向き合うか」)でも指摘されていたとおり、将来を見据えたビジョンがいまだ不透明であるからだ。
むしろ、北京大学教授の賈慶国が分析したように、民主主義や人権の重視といった「リベラルな国際秩序」とは別の、国家主権や内政不干渉という根源的なルールを重視する「世俗的国際秩序」の維持を目指しているように見える。
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