その後、11月の日米韓首脳会談では「インド太平洋における3カ国パートナーシップに関するプノンペン声明」と題する首脳共同声明を採択して、「包摂的で、強靭で、安全な、自由で開かれたインド太平洋の追求において、我々の取り組みを連携させていく」ことを表明し、経済安全保障での3カ国対話の開始、インド太平洋経済枠組み(IPEF)での緊密な協力などを約した。
そして12月には、韓国独自のインド太平洋戦略を発表した。今年に入ってからも、日韓首脳シャトル外交の実現、自身の国賓訪米、そして太平洋島嶼国との首脳会議開催と、意欲的な外交を続けている。
もっとも、国際社会により貢献すべきとの認識は、李明博政権の「グローバル・コリア」戦略以来、保守と進歩を問わず韓国外交の中にあり続けてきた。G20のメンバーになっただけでなく、今や世界10位の経済大国になったとの自信は、文政権の外交にも存在していた。
ただし文政権では、その自信は南北関係や対日政策におけるナショナリズムとなって表れた。それに対して尹政権は、その発露を普遍的価値に基づく国際的な連帯、即ちインターナショナリズムに求めているのである。ロシアによるウクライナ侵略後の国際情勢は、そのような尹政権の外交を大きく後押ししている。
「相互尊重」を目指す対中外交の課題
現在そしてこれからの韓国外交にとって最大の課題の1つが、中国との関係設定であることは周知の通りである。
とりわけ、米中両国の戦略的競争が続く中で、上記のような「価値外交」を推進する尹政権には、中国との関係設定がより一層の負担となってのしかかってくる。これまでのところ、尹政権は大統領選挙公約で掲げた「相互尊重に基づく中韓関係を具現する」ために、中国に是々非々で臨む姿勢を維持している。
最近では、4月に『ロイター通信』が行ったインタビューで尹大統領が、「私たちは国際社会とともに、力による現状変更には断固として反対する。台湾問題は中国と台湾だけの問題ではなく、北朝鮮問題と同じように、世界全体の問題である」と踏み込んだ発言を行い話題となった。
さらに、この発言に反発した中国に対して韓国が抗議し返すという、これまでにない対応も見せた。
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