トランクコーヒー、喫茶王国・名古屋に挑む 東海地方のコーヒーシーンの台風の目に

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北欧のヴィンテージ家具が置かれたトランクコーヒーの店内。ゆったり落ち着いた空間がくつろぎをもたらす

ヴィジョンを語る言葉が空疎に響かないのは、鈴木さんが数々のアイデアを打ち出して、矢継ぎ早に実行してきたからだ。今やトランクコーヒーは東海地方のコーヒーシーンの台風の目である。店の内外で多彩なイベントを開催するほか、岐阜県の業務用食器メーカーと組んでコーヒーカップやドリッパーを共同開発した。

「ワールドバリスタチャンピオンシップに使われるカップにはサイズの規定があるが、地方で暮らしていてエスプレッソもカプチーノも飲んだことのない人々が、そんなことを知るはずもない。飲んだことのない人がカップを作ってもダメだと思ったから、食器メーカーに行ってコーヒーのワークショップを開き、実際にみんなに飲んでもらうことから始めました」

攻めのアイデアで注目を浴びる

完成した色とりどりのカップは名古屋の某大手雑貨店に並び、世界的なIT企業の社員食堂にも採用されている。東海地方の雑誌がコーヒー特集を組む際には、編集部から企画内容について相談が持ち込まれる。地元の産業を盛り上げながら新しい名古屋のコーヒー文化を全国に発信するトランクコーヒーの現在は、攻めのアイデアの成果だ。

細部にまでこだわったトランクコーヒーオリジナルの商品

最初から順風満帆だったわけではない。オープニングこそ行列ができる盛況だったが、通常営業がスタートすると「モーニングはやってないの?」と尋ねられる毎日が始まった。朝の時間帯には、コーヒーに無料でトーストやゆで卵が付いてくるのが名古屋の喫茶店のモーニングサービスの基本だ。人々が話題にするのは、その朝食にどんな趣向が凝らされているか、どれだけお得かであって、コーヒーの味ではない。

トランクコーヒーの提案は、コーヒー豆の個性が際立つ高品質のコーヒーを楽しむこと。主役はあくまでもコーヒーである。開店して8カ月が経過した現在、ようやくモーニングサービスの有無を聞かれないようになってきた。メニューを知っているリピーターが増えたのだ。

店の目の前は桜通。この大通りに面したテラスの赤い日よけに、「TRUNK COFFEE BAR」の文字。テラス席を通って店内に入るとエスプレッソマシンや焼き菓子が並ぶカウンターがあり、バリスタが笑顔で迎えてくれる。コーヒーはテイクアウトしてもいいし、北欧のヴィンテージ家具が並ぶ洗練された空間に座って楽しんでもいい。

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