ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)は、全国から地方予選を勝ち抜いてきたバリスタが出場し、エスプレッソ抽出の技術とプレゼンテーションを競い合う競技会だ。近年ひときわ注目が高まっている理由は、2013年に優勝した20代の井崎英典バリスタ(丸山珈琲)が、イタリアで開催された世界大会で、日本代表として初のワールドチャンピオンの栄誉に輝いたためである。
2014年秋、新しいチャンピオンが誕生するJBC決勝大会を前に、準決勝進出者16名の名前が発表された。リストにずらりと並ぶ京都勢の多さに驚かされたが、とりわけ目立ったのが京都・長岡京に本店を持つウニールの躍進である。なんと、16名のうち4名がウニールのバリスタなのだ。
バリスタは15分間の中に世界を構築する
ウニールのヘッドバリスタとして活躍する山本知子さんは、2011年にも4位入賞を果たしているが、今回は彼女のほかにもウニールから3名のバリスタが出場し、全員が準決勝に進出している。驚異的な実力だ。そして東京ビッグサイトで行われた準決勝大会の結果、山本知子さんが見事ファイナリスト6名の中に入り、決勝へと勝ち進むことになった。
競技者は15分という制限時間の中で、エスプレッソ、カプチーノ、創作ドリンクの3杯を審査員たちに提供しながら、そのコーヒーの魅力をプレゼンする。どの生産者のコーヒー豆を選び、どんなテーマに沿って3杯を作りあげるか。その意図をどうわかりやすく説明するか。15分の中に豊かなコーヒーの世界を構築しなければならない。
最新鋭のエスプレッソマシンを設置した競技会場には、独特の張りつめた空気が漂う。
取材のため近くで観戦する機会を得たが、よく見ると、何度もこの舞台に立ってきた熟練のバリスタでさえ、カップにミルクを注ぎ入れる手が緊張のあまり微かに震えていたりする。こちらまで息が詰まるようだ。
決勝のステージ。準備を整え、エスプレッソマシンの前に立った山本知子さんがひとつ、大きめに呼吸をする。その瞬間、彼女の中でスイッチが入ったのがわかった。審査員と観衆の注目の中で、彼女の笑顔が花のようにふわりと開く。数えきれないほど訓練を繰り返し、香りと味を確認してきた15分間がスタートする。
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