スペシャルティコーヒーのポイントその1は、驚くなかれ、「飲んでおいしいこと」である。こんなに単純な、何も説明していないような定義が果たして有効なのだろうか?
その素朴な疑問が、従来のコーヒーの格付けにおいては、味が直接の評価基準ではなかったことを認識させてくれる。一般的なコーヒーは、たとえばコロンビアなら豆の大きさで等級が決められ、グアテマラなら農園の標高で決められるのだ。「スペシャルティコーヒーは味を評価し、それによって価格を決定します」。
第2のポイントはトレーサービリティである。スペシャルティコーヒーは、誰がどこでどのように栽培、収穫、精製したのかが明らかで、各工程の品質管理が徹底されていなければならない。
そして第3のポイントは、サスティナビリティだ。生産者が良質のコーヒーを作り続けられるように、環境はもとより、バイヤー、ロースター、販売店からお客さまに至るまで信頼関係を維持継続できるよう取り組むこと。
「僕たちC-COOPはうわべだけではなく、本気でダイレクトトレード(直接取引)をしているから、たとえば生産者が『今年は100袋できました』と言ってきたとき、10袋だけ買うというわけにはいかない。100袋に責任を持って、翌年以降もどのように取り組んでいくかを生産者と話し合うんです。だから消費者にそのコーヒーのおいしさを知ってもらい、たくさん飲んでいただくことが必要になる」。
自身でもカフェを再開
消費者に直接コーヒーを届けるお店と情報を共有したいと考え、ウニールはバリスタの育成に力を入れながら、自身でもカフェを再開した。京都市内の繁華街にカフェ&ラボ、大阪の阪急うめだ本店にコーヒースタンドを展開し、日々、多くのお客を迎えている。
それらの店舗には毎年のようにJBC終了後、短いがすばらしいお楽しみ期間が設けられる。知子さんが大会で実際に提供したエスプレッソ、カプチーノ、創作ドリンクのスペシャルコースが注文できるのだ。バリスタの説明を聞きながら味わう3杯には、驚きと小さな感動がある。もし今年の秋にもそんな機会が設けられたら、ぜひ体験したい。
「仕事に関しては、一度やり始めたら、いい加減なところで妥協することができなくなってしまう性分」と尚さん。
現在はJBCの審査員、及び日本スペシャルティコーヒー協会のローストマスターズ委員会の活動も行い、生活のすべてが仕事に結びついている。それはもしかしたら幸運な人生のひとつの形なのではないだろうか。
「生きる喜びとは、自分の楽しみと仕事をどうリンクさせるか、もう、そのことに尽きると思うんです」とは、尚さんが愛読するハードボイルド作家の言葉である。
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