セブン&アイ井阪体制続投で問われる「真の手腕」 スーパーを3年で利益体質、カギは縦割り打破

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午後1時過ぎに採決され、株主提案は否決、会社提案が可決された。会社提案のうち、井阪社長の再任についての賛成率は76.36%だった。実は事前の票読みでは、賛成率はもっと低くなるとの見立てがあった。ISSとグラスルイスという2つの助言機関が会社提案に反対した場合、外国人投資家はその“助言”に従うことが通例なためだ。

セブン&アイの外国人株主比率は約33%(2月時点)。国内の一部の機関投資家が会社提案に反対すれば、賛成率は60%程度まで低下するとの見方もあった。自らの賛成率を見て、井阪社長は胸をなで下ろしたことだろう。

「非常に残念。不採算なスーパー事業を切り離し、高収益なコンビニに集中できるせっかくの機会を逃してしまった」。井阪社長の再任に反対票を投じた個人株主はそう語る。

というのも、バリューアクトはセブン&アイの株主となったこの数年、同社にスーパー事業を切り離し、成長ドライバーであるコンビニに経営資源を集中するよう求めてきたからだ。今回の株主提案はあくまで取締役選任議案だったが、背景にあったのは祖業であるイトーヨーカ堂、そしてスーパー事業が今のセブン&アイに必要か否かという問いだったといえる。

3年でスーパー事業を再建

セブン&アイは3月、中期計画のアップデートとしてスーパー事業の再建策を公表している。

セブン&アイが取り組むスーパー事業の「構造改革」は大きく4つの要素からなる。自社アパレルからの撤退、首都圏への集中と店舗の追加閉鎖、組織の統合再編、そしてインフラの整備だ。最後の2つについては、ヨーカ堂と首都圏で食品スーパーを展開するヨーク、シェルガーデンの3社を年内メドに統合し、食品の加工や調理を集中的に行うプロセスセンターやセントラルキッチンを共同で整備する。

そうして2025年度には首都圏のスーパー事業のEBITDA(利払い・税・償却前利益)を550億円とする計画だ。これはEBITDAを2022年度と比べて実質的に3倍にする内容で、「大胆なコストカット、トップラインの引き上げが必要で、かなりハードルは高い」(流通アナリスト)。

ヨーク社が運営する東京・中野駅前の店舗。もともと通常の「ヨークフーズ」だったが、昨年10月に「ヨークフーズ withザ・ガーデン自由が丘」としてリニューアルオープンした。

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