この離れの片付けは2日間に及んだが、時間でいえば計10時間もかかっていない。しかしゴミ屋敷の片付けは、始めてしまえばあっという間でも、始めるまでに苦労する人が多い。
「現状に悩まれている依頼者さん自身が居住者ではない場合、家に入れてすらもらえず、説得が長引いてしまうことはよくあります。どうやったら片付ける気持ちになるんだろう、どうやったら業者を入れられるんだろう、といった相談の問い合わせはすごく多いです」
そんなときに一番やってはいけないことは、居住者ではない人間が部屋にあるモノを勝手に「ゴミだ」と決めつけてしまうことだ。
居住者が“いるモノ”と“いらないモノ”を考えている横で、親族である依頼者が「全部ゴミなので関係なく捨てちゃってください」と無理やり作業を進めようとしたことが何度かあった。その際は決まって口論となり、作業自体が中断になってしまったという。
「第三者からはただのゴミに見えても、住んでいる本人にとってはゴミじゃないんです。一方的に『片付けよう』『綺麗なほうがいい』と意見を押しつければ摩擦が生まれるだけで、相手は心を閉ざしてしまいます」
片付けられない親族を説得するには
自分の身に置き換えてみるとわかる。久しぶりに自分の家を訪れた両親が、「あんたちょっとモノ多いんじゃない? これいらないでしょ」と勝手に部屋のモノを捨て出したらどう思うだろうか。
「なんでそんなこと急に言われなきゃいけないんだ」と反発するはずだ。大事なのは片付けに対する熱量を合わせること。第三者だけが勝手に片付けモードに突入しているのでは、かえって先に進まない。
「僕らの動画を片付けられない人に見せるにしても、『見て、この動画。早くこんなふうに片付けよう』ではダメなんです。まずは、『この業者、いるモノといらないモノを一緒に仕分けしてくれるみたいだよ』と、片付けを意識させるところから始めるんです。
5年や10年、ましてや15年もかけて散らかった部屋に対して、1日や2日で気持ちを切り替えるなんてできるわけがないですから。根気は必要だと思っています」
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