私たちが生活をしていくうえで欠かせない「水」にまつわる本連載。近年、異常気象などで水災害や干ばつなどが増える中で、企業による水の再利用に関心が高まっているが、今回はその中でも非常にユニークな取り組みをしているミツカンの工場を紹介しよう。
企業の業績を左右する「水リスク」
企業活動に水は欠かせない。企業の水利用というと飲料水メーカーのことをイメージするかもしれないが、あらゆる製品の製造に水は欠かせない。
熊本県に台湾の半導体大手TSMCが進出するが、かの地が選ばれた理由は、関連企業の集積、交通アクセスのよさに加え、半導体生産に欠かせない水資源が豊富なことだ。
また、飲料・食品メーカーの1次サプライヤーでの水使用量は全体の90%を超える。例えばビール製造には大麦、ジュースには果汁が必要で、それらの生産には水が必須。例えば、アメリカ・フロリダ州の干ばつの影響でオレンジの生産量が減少すれば、原材料が入手できなくなるリスクがある。
つまり、企業にとって干ばつや洪水といった「水リスク」は業績を左右する重要事項になっているといっていい。こうした中、水不足の対処策として注目されているのが、生産活動などで使った水を再利用する「水循環システム」だ。これは工場など拠点内で水をぐるぐると循環利用する閉じたシステムである。
水循環システムの目的は、排水を再利用し、高騰する水に関するコストと水使用量を削減すること。また、工場内で極限まで水を繰り返し利用すれば、水環境への影響を最小限に抑えられるうえ、地域の水不足の解消にも貢献できると考えられている。今後はこれが世界標準となり、日本企業でも導入する例が増えてくるだろう。
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