工場排水で地域に貢献「ミツカン工場」の凄い発想 工場に隣接するビオトープで可能になったこと

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実際、TSMCは製造過程で使用する水を工場内で少なくとも3.5回再利用しており、2020年には使用した水の約87%に相当する約1億7300万トンの水を再利用した。デンマークのビール会社カールスバーグも、2030年までに水使用量を半減させることを目標としており、使用済みの水の90%を処理して再利用するとしている。

工場内にある「ビオトープ」

こうした中で、水の再利用を工場内にとどめない、興味深い取り組みをしている工場がある。2007年に稼働したミツカンホールディングスのミツカン三木工場(兵庫県)だ。ここには、めんつゆ、ポン酢など家庭用調味料を製造するドライ工場、納豆を製造するチルド工場がある。

同工場内には「ミツカンよかわビオトープ」がある。ビオトープというと、池をイメージする人が多いかもしれないが、もともと「Bio(ギリシア語で『命』)+topos (ギリシア語で『場所』)」だから、本来は自然・人工を問わず生き物が生育・生息する場はすべてビオトープである。

ミツカン三木工場の工場を含めた総面積は28ha(開設当時、2013年一部売却)だが、丘陵地にあるため工場用地として使用できる平地は半分ほどだった。

残りの場所をどう活用するか。森林、田んぼなどさまざまな自然をビオトープとして整備すれば、自然環境は保全できるし、工場の環境もよくなる。多様な自然環境で生態系が安定すれば食品工場の大敵である昆虫の大量発生を防げるうえ、自然学習の場を提供することで地域貢献もできるーー。

工場の隣に手入れの行き届いた生態系があるというスタイルを、21世紀の工場の1つのモデルにしたいと考え、2003年にビオトープ計画がスタートし、工場に先駆け、2005年春に完成した。

ミツカン三木工場
ミツカン三木工場の模型(写真:筆者撮影)

ビオトープの広さは約16ha(開設当時、2013年一部売却)と甲子園球場の約4個分で、自然保護ゾーン、よかわ里山公園、湿地ビオトープ、赤松再生ゾーンから構成されている。

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