「もう住めない」高学歴者たちが大都市から流出中 高すぎる生活費にアメリカで進む大脱走
リッチな都市は長年にわたって、低賃金労働者の流出がもたらす不均衡に悩まされてきた。低賃金労働者が流出することで、低賃金のスタッフを雇う必要のある企業はストレスにさらされ、労働者階級が住む地域は住民を失ったことで荒廃する。
また、沿岸部の大都市は求人が多くセーフティーネットもしっかりしているが、高すぎる生活費が低所得世帯の流入を阻む要因となっていた。生活費が高すぎて消防士や保育士のようなエッセンシャルワーカーが住めない状況は、その地域にとっても好ましくない。
「富の異常な集中」のひずみが臨界突入?
他方で大卒住民の流出からは、もっと込み入った問題が浮かび上がる。国内の人口移動はゼロサム、つまり、地方自治体の担当者や税務署が引き留めたいと考えている大卒者のワシントンDCやサンフランシスコからの流出は、ミズーリ州カンザスシティーやフロリダ州オーランドにとってはプラスとなりうる。格差問題を専門とする研究者は、大卒者(および彼らの購買力)が沿岸部に集中する状況が緩和されるのはよいことだと指摘する。
「スーパースター都市における富の集中はすさまじく、健全とはいえない」。高学歴でない労働者向けのよい働き口が徐々に失われてきた経緯をたどる研究を行っているマサチューセッツ工科大学の経済学者デイヴィッド・オーターは、「そうした都市の富は一部の人々に極端に集中しているともいえる」と話した。
ミネアポリス連邦準備銀行で「機会とインクルーシブな成長研究所」を率いるアビゲイル・ウォズニアックによれば、「これは選択をめぐる問題、誰が選択肢を持っているかをめぐる問題だ」。
「店を開く夢を持っていた」。生まれ故郷のニューヨーク市で自分のバーを持ちたかったというローラ・ニューマン(33)は、「その夢を本当に追いかけたかった。でも、どれだけ貯金しても無駄だった」と語る。「だって、貯金しても、店を持つのに必要な費用がどんどんと上がっていくんだから」。
ニューマンが2017年にアラバマ州バーミンガムに引っ越したのは、そのためだ。彼女はニューヨークではなく、そこで自分にとって初めてのバーを開くことにした。
(執筆:Emily Badger, Robert Gebeloff, Josh Katz)
(C)2023 The New York Times
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