「もう住めない」高学歴者たちが大都市から流出中 高すぎる生活費にアメリカで進む大脱走
ところが、国内の人口移動データを見ると、低所得の住民が生活費の高い沿岸部の都市に住めなくなる状況が何年も続いた後、今度は高所得ワーカーもそうした都市から流出するようになった。
確かに沿岸部の大都市には、今でもアメリカのほかの地域から生産年齢の大卒者が流入し続けている。とはいえ、流出者の数が急速に増加していることから、高学歴人材を引き寄せてきた大都市のメリットは薄らぎつつある。上述の分析からは、サンフランシスコ、サンノゼ、ロサンゼルス、ワシントンDCのすべてで、大卒者が流入する以上に流出するという、重要な一線を越えたことが明らかになっている。
今世紀に入ってからほぼつねに、アメリカ国内で移住する大卒者の動きは人口100万人以上の大都市にプラスとなり、小規模な都市が割を食ってきた。だが、こうした大都市の中でも最も生活費の高い12の都市(そのほぼすべてが沿岸部に位置する)では、大卒者が流入によって純増する一方、学位を持たない労働者が大量に流出するという、ほかにはない2方向の人口移動パターンが観察されてきた。
少なくとも、最近まではそうした状況になっていた。ところが今では、生活費の高い大都市からは、大卒者とそうでない労働者の双方が流出するようになっている。
豊かな地方都市に移住する動きが加速
大都市から流出した大卒ワーカーは、栄えてはいるがそこまで生活費が高くないフェニックス、アトランタ、ヒューストン、フロリダ州タンパのような都市に向かう傾向が強まっている。パンデミック中には、メイン州ポートランドやノースカロライナ州ウィルミントンなど、比較的小さな都市に流入する大卒ワーカーも増えた。
アメリカの人口移動率は現在、歴史的に見ても低い水準となっており、1980年代以降、移住率はあらゆる人口集団で低下してきている。もっとも、大卒ワーカーの間では近年、そうした傾向が逆転した。
パンデミック前の数年間で、大卒ワーカーの移住率は実際に上昇していた。どんどんと移住するホワイトカラーと、1つの場所にますますとどまるようになったブルーカラー労働者の間で、アメリカ経済に新たな分断が潜在的に生まれた格好になる。