3種類すべての報酬額を同じに設定した場合、被験者は約3分の2の割合で自分に関する質問を選んだ。
質問の種類ごとに報酬額に差をつけると、たとえもっとも報酬額の高い種類の質問ばかりを選んだ場合より稼ぎが少なくなったとしても、自分に関する質問をもっとも多く選んだ。
人は自分のことを打ち明けるためなら「進んでお金をあきらめる」と、その論文には記されている。
我々は社会性動物である。ひとりぼっちで生きているのではなく、社会の一部をなしている。
鳥の群れが飛ぶ方向を変えるとき、ほかの鳥に指示を出すリーダーの鳥がいるわけではない。おのおのが本能的に心を通わせて他者に合わせることで、協調行動を取る。
それは我々にも当てはまる。みなつながっていて、そのつながりは情動によって築かれているのだ。
「パースペクティブ・テイカー」の強み
私は短いあいだ会社勤めをしていたとき、2人の取締役副社長の下に付いた。
1人目は部下たちを心から気遣い、部下の情動を読み取って、親身になって建設的に対応するのに秀でた女性だった。
部下たちも誠実に応え、どんなときでも進んで全力を尽くした。しかしそのボスが引退して後を継いだ女性は、他人の感情に無頓着だった。
あるとき会議の席で檄を飛ばし、自分の目標はこのグループで多くの利益を上げて、5年以内に自分の報酬を100万ドル超えにすることだとぶち上げた。だが誰もその目標のために進んで努力しようとはせず、士気も利益も大きく下がった。
心理学では、他人の考えや感情を理解できる人のことを「パースペクティブ・テイカー(視点取得型人間)」という。他人の視点に立てる人は、集団の情動を円滑に導いて、競争と協力のちょうど良いバランスを見出すことができる。
そうでない人はもっとずっと苦労する。このように、他人の視点に立つことは重要な社会的スキルであって、仕事でも私生活でも、人を惹きつけて説得し、数々の分野で成功するための鍵となるのだ。
(翻訳:水谷淳)
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