では、胃痛や胃もたれが機能性ディスペプシアだった場合、どんな治療をすればよくなるのだろうか。
「最も大切なのは、生活習慣の改善です。とくに食生活の改善が重要で、それだけで症状がよくなる人もいます。あとで薬物治療についても触れますが、薬を飲んでも生活習慣を改善しなければ、効果は半減すると考えてください」(眞部医師)
胃が刺激に敏感な状態になっているので、食べ物を工夫することで、症状が和らぐ。脂肪分を多くとったり、食べ過ぎたりすると胃痛や胃もたれが出る人は、脂身の多い肉や揚げ物、炒め物、生クリームなどの高脂肪食を避ける、1回の食事量を少量にして分けて食べるといった対策が効果的だ。
ほかにも禁煙のほか、症状が強い場合は、胃酸の分泌を刺激するお酒やコーヒーを控える。
薬物治療では、まず消化管の動きをよくする消化管運動機能改善薬(アコチアミドなど)や、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬など)が使われる。
「胃痛がメインの場合は酸分泌薬を、胃もたれや早期飽満(ほうまん)感(食事をしてもすぐにお腹がいっぱいになる)がある場合は、消化管運動機能改善薬を使っていきます。やせ型の女性には、漢方薬の『六君子湯(りっくんしとう)』も適しています」(眞部医師)
1~2カ月服用して効果が見られなければ、抗不安薬や抗うつ薬、あるいはほかの漢方薬なども検討する。症状が改善されれば治療は終了となるが、機能性ディスペプシアは再発しやすいという報告もある。
機能性ディスペプシアは放置しても、がんや潰瘍などを引き起こすようなことはないと考えられている。しかし、慢性的に症状があると生活の質が落ち、仕事を休まざるをえなくなることもある。食欲の低下で栄養が十分に摂れなければ、ほかの病気を引き起こす可能性もある。
市販の胃薬を使ってもいいか?
最後に、病院には行かず市販の胃薬で対応している人も多いだろう。そちらについても眞部医師に聞いた。
「胃痛や胃もたれについては市販薬も多く、それで症状が改善することもあります。市販薬を2、3回飲んで、その後症状が落ち着けばそれで問題ありません。薬をやめると症状が再び出る場合は、消化器科を受診することをおすすめします」(眞部医師)
(取材・文/中寺暁子)
眞部紀明医師
1993年、広島大学医学部医学科卒。2003年広島大学大学院修了。広島大学病院光学医療診療部などを経て、2018年から現職。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・胃腸科指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本超音波医学会専門医・指導医、日本ヘリコバクター学会H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医。
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