中国のお金持ち旅行者が感じる「日本の残念な点」 富裕層はLCCを使わないという大いなる勘違い

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しかし、こうしたLCCに乗って300万円も軽々消費できる訪日中国人がビックリしたのが、T3の「素朴さ」だった。「LCCでほかの国にも行くが、アメリカでもシンガポールでも香港でもどこもこんなにLCCを『差別』していないんだよね……T3とにかく遠いし、着いたら半露天の廊下にびっくりするし、売店も免税店もとても残念。最後の最後にもっと楽しみたかったと毎回思うわ」とAさんは本音を吐く。

確かに、T3に行けば、いかに「格安」扱いされているかがわかる。一般人に親しみやすい路線でデザインしたのか、LCC専用ということだけで消費力が低いと思っているのかはわからない。

もちろん、ターミナルに関する評価は個人の感想になるし、T3も数年前に比べて進化しているとは思う。だが、結果的に「格安航空券に乗る人に他ターミナル並みのサービスと消費リソースを提供していない」ことにより、売り上げを失い、満足度にもマイナスな影響が出ているのは事実だろう。

日本に「安いから来ている」という勘違いの危険

富裕層や訪日外国人にまつわる「勘違い」があると、本当の消費ポイントを見過ごしてしまううえ、長期的なインバウンド戦略やブランド戦略にも影響が及ぶ。

例えば、現在メディアでよく報道されている「円安効果で訪日外国人の財布のひもが緩んでいて消費額が向上し、日本が人気」というストーリーである。取材に答えた外国人観光客(なぜか欧米人がメイン)が、「日本は安い、安い」と歓声を上げる内容になっている。

実際インバウンド関係から、「円安のままであれば、うちはなんとかできる」「うちは外国ブランドと違い、コスパがいいから、海外富裕層の方々に買ってもらえると思う」といった発言を聞くことがある。確かに、2023年1〜3月の一般客1人当たり旅行支出は21.2万円と、2019年前年平均の15.9万円より33.3%も増えている。

しかし、理由は本当に円安だけなのか。つまり、「安い」のを本当に売りにしていいのだろうか。

BさんとCさんはカナダに移民した華僑夫婦である。30代に入ったばかりの彼らも、典型的な高付加価値旅行者である。1980年代以降に生まれた中国人富裕層は、海外留学する人が多く、そのままその国で働き、移民する。

以前書いた日本の新移民もそうだが、海外にいながら、旅行について中国語の情報収集をしている。ビザの制限も少ないので、いわゆる気軽に来日できる「中国外からの訪日中国人」だ。

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