メルセデス・ベンツの電気SUV「EQE SUV」の本気 走りに加え、高効率性と持続可能性を徹底追求

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こうして実現したのが前述の航続距離となる。バッテリー容量は同じとはいえ、EQEセダンとは車両重量も前面投影面積も異なるだけに単純比較はできないが、いえるのは、単に既存のBEV専用プラットフォームを用いて今度はSUVを作りました……というのではなく、効率性向上のため全方位で手が入れられているということだ。

一方、持続可能性の追求に向けた徹底的な姿勢を感じさせるのが、そのインテリアである。基本的なデザイン、レイアウトは近年のメルセデス・ベンツに共通の雰囲気だが、使っている素材はサステイナビリティに配慮したものばかりだ。

たとえばダッシュボードやドアトリム、ステアリングホイールには本革ではなくシンセティックレザーが用いられ、ルーフライニングなどにはリサイクル材を40%以上用いたマイクロファイバーが使われている。また、フロアカーペットには環境問題にもなっている廃棄漁網からリサイクルされた繊維が使われているといった具合だ。

実は外観でも、アウタードアノブはなんと廃タイヤをもとにした原料から作られている。床下の空力パーツなどもやはり再生プラスチック製とされるなど、車両全体を通じて、こうした姿勢が貫かれている。

すでにメルセデス・ベンツ乗用車部門は、2030年以降のすべての新車に40%以上のリサイクル素材を使用すると宣言している。EQシリーズは、まさにその尖兵というわけだ。

想像以上に滑らか、かつ軽やかな走り

さて、では走りの印象はどうか。まず感じたのは想像以上に滑らか、そして軽やかだということだ。実際の車重は軽くはないはずなのに、そんな風に感じられるのは、電気モーターの特性をうまく活かしたしつけ、空力特性の良さ、メルセデス・ベンツのお家芸というべき懐深いシャシー性能がうまく溶け合っているからだろう。

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入念にノイズを削ぎ落とした高い静粛性を含めて、SUVとしての快適性、使い勝手も申し分なく、パッケージングとして総合点は非常に高い。EQシリーズの約4年の経験、知見がフルに活かされていると感じる。

今こうした高価格帯のBEVを購入する層は、当然サステイナビリティや環境問題などに対して、高い意識を持っている人が多いだろう。EQE SUVは単にパワートレインが電動だというだけでなく、そうした意味でも期待に応えるプロダクトであることが指向されている。

さらにいえば、空気抵抗低減の副産物でサイズも肥大化するこのセグメントの中では比較的小ぶりで、取り回しは良く駐車場所の確保も難しくないというのも特徴としてあげておきたい。

いよいよメルセデスEQのクルマづくりが成熟期に入ってきたなと感じさせるニューモデルの登場といえそうなEQE SUV。日本では年内の発売ということだが、さてBEV普及のいまひとつ盛り上がらないこの国で、どのように受け入れられるだろうか。

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島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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