「給湯室長物語」の見出しには「あるとき、会社のベランダに給湯室の布巾が干してあった。なぜ? と追求するうち給湯室をめぐるさまざまな問題が見えてきた。これは給湯室長の推進した改革の物語である。」と書かれていて、給湯室内のBefore/Afterの見取り図も出ています。
なんだか読んでみたくなりませんか。会社の給湯室について書かれた社史は、私の知る限り他にありません。でも、書きとめておかなければ確実に消えてしまう物語でしょう。
後日、私は社屋を訪れますが「ここが、あの給湯室ですね」と給湯室を覗いたり、初代給湯室長に会って感動したりする、めずらしい来訪者になりました。
特殊ミラーを究める
コミーは埼玉県川口市にあります。さまざまな特殊ミラー(鏡)を製造している中小企業で、『コミーは物語をつくる会社です。』を刊行した2013年に設立40周年を迎えました。銀行のATMの覗き見防止ミラーをよく見ると、たいてい「Komy」の小さなロゴが目につきます。航空機の荷物棚に付けられた忘れ物確認ミラーでもコミーは圧倒的なシェアを持っています。
ユニークな経営手法で知られる中小企業で、創業者で社長の小宮山栄氏はメディアにも数多く取り上げられ『なぜ、社員10人でもわかりあえないのか』(日経BP社)も出版されています。また、小宮山氏は国際箸学会の活動にも尽力されています。
さて、あらためて『コミーは物語をつくる会社です。』を巻頭のカラーページから見ていきます。普通は社長の「ごあいさつ」などから始まるのですが、この社史の巻頭は、さっぱり売れなかった商品(失敗作)です。そして「失敗からわかった」「失敗から生まれた新製品」へとつながるのですが、失敗作が巻頭を飾っている社史は唯一かもしれません。その理由は小宮山氏による「あとがき」に書かれています。
全体では、24の物語を「おもしろ話」を含めた5つのテーマに分けて収録しています。例えば、車椅子の視点でどういうミラーが必要なのかをまとめた物語、店舗のミラーが防犯だけでなく接客での気くばりに使えることに気が付いた物語、万引き対策でのミラーの効果を検証していった物語、ボーイングの旅客機にミラーを採用してもらう物語、社内を整理整頓し業務の効率化を図った物語などです。図や写真なども随所に掲載されているので、どの物語も理解しやすい内容になっています。
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