有名観光地ばかり旅行する人が見落とす重要視点 「違った街」で「いつものこと」をする効用

「近くて遠い場所」に出かける
僕は小学生のころ、長崎県の大村という街に住んでいた。海と山との距離が近く自然は豊かで、僕もフグを釣りに行ったり、カブトムシを採りに出かけたりしていたけれど、逆に、人間がつくったものはあまり充実していなかった。
僕の好きな図書館もあまり大きくなかったし、当時はインターネットもなかったので、大村駅前のアーケードにある商店街で売っていないものは基本的に手に入らなかった。
ところが、鉄道で2駅離れたところにある諫早は大村よりひとまわり大きな街で、図書館も駅前の本屋も模型店も大村よりもひとまわり大きくて、大村では手に入らないものが手に入った。
いまとなっては、インターネットの通信販売でたいていのものは手に入るから、若い人にはよくわからない感覚かもしれないけれど、あの頃の世の中では、ある場所で手に入らないものが他の場所では手に入るということがものすごく価値のあることだった。そしてそのために移動することを誰も面倒だとは考えていなくて、むしろ最高に楽しいことだったのだ。
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