有名観光地ばかり旅行する人が見落とす重要視点 「違った街」で「いつものこと」をする効用

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僕がそんなふうに考えるきっかけになったのは、何年か前に、大学での講演と本の翻訳の用事で台湾にたまたまひとりで出張したときの経験だ。そのとき半日ほど空いた時間があったので、僕は台北の学生街のスターバックスコーヒーで、東京にいるときと同じように、午前中いっぱい仕事をすることにした。

そのスターバックスは学生らしい若い人たちでとても賑っていて、どのテーブルにも人か人で集まって楽しそうにおしゃべりしたり、本やノートパソコンを大きく広げて授業の課題について話したり、議論したりしていた。

外見こそ日本のスターバックスと変わらないものだったけれど、店の中の壁面には、学生たちが貼り付けたと思われる勉強会やサークルや課外活動の勧誘やイベントの告知の貼り紙がびっしりと貼り付けられていた。これはちょっと日本ではまずあり得ないことだと思う。

ひとり旅で浮かぶ、いつもとは違う着想

このとき僕がいた地区は、台湾の有名大学が集まったかなり大きな学生街で、街には書店やスポーツショップや、夜遅くまで開いている若者向けのカフェがたくさんあって街全体が活気に溢れていた。僕はこの隣の国の若者たちから、なんだかエネルギーを分けてもらったような気がした。

台北の学生街の夜カフェ(写真:『ひとりあそびの教科書』より)

ここで過ごした数時間は、僕にとってとても充実した時間だった。このとき、僕はそれまでずっとうまくまとまらなかったアイデアをひねり出すことができた。

それは結果的に仕事の役に立つことになったわけだけれど、たとえそんなことがなかったとしてもとても気持ちのいい、新鮮な体験だった。僕がこのとき痛感したのは、人間は周りの環境を変えるだけで、こんなに気持ちが切り替わるのかということだった。

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