細菌と違い、ウイルスに対する治療薬はないため、痛みや炎症を抑える薬を使いながら、自然に回復するのを待つことになる。「ほとんどのケースは悪化することなく、2~3週間程度で回復しますが、熱がひかない場合、肝機能がよくならない場合などでは、経過観察をしていく必要があります」と櫻井さん。
もちろん、治療中はウイルスが活発に唾液中に出てきているので、他者に感染させないよう注意すべきだろう。
なお、なかには伝染性単核球症の症状として、左上腹部にある脾臓が腫れる患者もいる。脾臓は血液豊富な臓器なので、衝撃を受けて破裂すると出血性ショック(出血により体から大量の血液が失われることで、全身の臓器障害が引き起こされる状態)を起こすため、腫れが治まるまで運動などを禁止する必要がある。
喉の痛みはウイルスや細菌に感染した兆候であり、悪化させないためには体を休めることが大事であることは間違いない。さらに、適切な処置を受けるために、内科や耳鼻咽喉科などを受診したほうがいい。
前回の記事(【喉の痛み・声がれ】注意したい咽頭の病気一覧)でも書いたように、鼻咽腔内視鏡や首のエコー検査が必要な場合は耳鼻咽喉科への受診が適切で、必要に応じてかかりつけの内科医に紹介してもらおう。
喉の感染症を予防する方法
では、さらに一歩進んで、できるだけ感染をしないための予防策はあるのだろうか。
櫻井さんはセルフケアとして、「こまめな水分補給」と「口腔ケア(口の中を清潔にすること)」が有効だとアドバイスする。
「喉が乾燥するとウイルスや細菌に感染しやすいため、普段から水やお茶などをこまめにとって、喉を潤すといいでしょう。会議などで長時間、話をしている中で、『声が出しづらい』『声が上ずっている』と感じたら、水分摂取のサインです」
のどあめも喉を潤す効果がある。砂糖の摂りすぎに注意しつつ、利用するといいだろう。うがいで喉を洗うこともいいそうだ。これは喉を潤すことが目的なので、うがい薬を使う必要はなく、水道水で十分だという。
口腔ケアについては、高齢者の死因になりやすい誤嚥性肺炎やインフルエンザの予防に有効であることは以前からいわれていた。
口の中には虫歯菌や歯周病菌などを含む多数の細菌(悪玉菌)が棲みついている。口の中を清潔にすることでこうした細菌が減り、自浄作用などを促す善玉菌が優勢になることで、外から侵入する病原菌を防御する力が高まるといわれている。
口腔ケアの前提として、まず虫歯や歯周病など治すべき病気があったら、それを治療すること。そのうえで、日々の歯みがき、デンタルフロスといったセルフケアを励行する。男性は、“食後につまようじ”ではなく、歯みがきの習慣をつけることをお勧めしたい。
(取材・文/狩生聖子)
藤田医科大学岡崎医療センター耳鼻咽喉科
櫻井一生医師
1979年名古屋保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部卒。同大耳鼻咽喉科入局。藤田学園保健衛生大学(現・藤田医科大学)医学部耳鼻咽喉科講師、助教授、臨床教授、特命教授などを経て2020年4月より、現職。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本気管食道科学会気管食道科専門医(咽喉系)など。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら