「そんな面倒な!」と思われる方もおられるでしょう。同じ職場で、同じ業務に就き「言わなくてもわかるだろう」という感覚を持つのは自然なこと。「つーかー」という表現があるように、言わなくてもわかり合える間柄はとても美しく、理想的です。
しかし、それは長い時間と膨大なやり取りの積み重ねを経て生み出された、ある種の「特別な関係」であり、一朝一夕にできるものではありません。それを短期間で築けるなんて、単なる幻想です。
「ちゃんと」以外にも、行き違いの多い表現がいくつかあります。たとえば、「後で」という言葉。これもたびたにトラブルを起こす言い方です。たとえば「後で報告して」と言われたら、内容にもよると思いますが、どのくらいの期間の間に報告したらいいのでしょう。
5分後? それとも3日後?
私が行った研修で「後で」が指す期間の印象・感覚を尋ねたところ、答えは実に5分~数日まで、大きな開きがありました。5分で回答が来ると思っている上司が翌日まで待たされるなんて、我慢ならないわけです。相手への不満がむくむく湧いてくることになりかねません。「相手も同じような感覚を持っている」という意識をいま一度改め、期間や程度に関する内容も、できるだけ具体的に提示してみてください。
曖昧表現には、ほかにも「できる限り」「適当に」「十分に」などがあります。これらの言葉が習慣化しているという上司の皆さん、要注意です。
日本には、「察する」という文化があります。これは奥ゆかしく、相手を思いやるいい文化である一方で、「言わなくても察しろ」という要求の押し付けになる危険もはらんでいます。
チャットやメールでのやり取りが一般的になり、リアルなコミュニケーショントレーニングの機会を失ってしまっている人が多い中、「察する」スキルを身につけるのが難しくなっています。
さらに最近の若手社員には「聞くに聞けない」という人が多く、これが「曖昧ワードのコミュニケーション」に加わることで、追い打ちをかけているケースがあります。これはプライドが高い割に自己肯定感の低い「ゆとり世代」を中心に多く見られる現象です。
「聞くに聞けない」状態に陥ってしまう要因の一つは、普段から「簡単なやり取り」をしていないことです。いわゆる日常会話、悪く言えばムダ話。これらを避ける傾向が、いざというときに「聞けない」という状況を助長している可能性があります。
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