山梨県「人口当たり寿司屋の数全国1位」のなぜ 海なし県ゆえの海産物への憧れだけではない

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山梨県は「健康寿命」全国第1位といわれています(写真:まちゃー/PIXTA)
人生の半分は夜である――。日本各地の「夜の街」を訪ね歩き、スナックやバー、ラウンジに関する分析から人間の在り方を考察する法哲学者で「スナック研究者」の谷口功一氏。自著『日本の水商売 法哲学者、夜の街を歩く』の中から、地域にいまなお残る経済的慣習や、風土が生んだ社会的資源を明らかにする。

山に囲まれているのに「ヤマナシ」

荒井由実の1976年の楽曲「中央フリーウェイ」、私がカラオケでもっとも好きな歌の1つである。曲中では、荒井が都心でのデートから八王子市の実家(荒井呉服店)へと帰る道すがらの風景が歌われている。

最初に出てくる「調布基地」は、もともと禁闕(きんけつ)守護にあたる飛行第244戦隊を擁した旧軍の飛行場だったが、終戦とともに米軍に接収され、1973年の返還まで米軍管理下の「基地」だった。

その先、府中市で左手にサントリーのビール工場、右手に府中競馬場を見ながら、車は「夜空へ続く滑走路」のような中央自動車道を「山」へ向かってゆくが、今回の舞台、山梨県甲府市は、この山のあなたにある。

山に囲まれているにもかかわらず「ヤマナシ」であるのは、律令制下の甲斐四郡の一つである「山梨郡」に由来し、古くは『和名類聚抄』に「夜萬奈之(やまなし)」とも訓じられている。本居宣長によるなら旧国名の「甲斐」は山々の「峡(かい)」に由来しているとのことであり、こちらのほうが名は体をよく表しているかもしれない。

冒頭の中央フリーウェイをひた走って山峡を抜けると、あるとき突然、甲府盆地が目の前にひらけてくる。春4月の頃に眼前に出現する桜と桃の花が咲き乱れる甲府盆地の風景は、まさに桃源郷とも言うべきものである。

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