山梨県「人口当たり寿司屋の数全国1位」のなぜ 海なし県ゆえの海産物への憧れだけではない

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関東近県への旅行は、平野から平野のひたすらに平らかな道ゆきで、後ろに残してきた日常と一体どこで切れたのかも曖昧なままに目的地に達してしまうが、甲府行は山越えのこの道中こそが旅情をかき立てるのだ。

そんな甲府に馴染みのスナックがある。いわゆる「裏春日」界隈の「みかづき」という店だ。この店とのなれそめ? は、かなり変わっていて、最初に店を見つけたのは年長の友人、田尻邦夫さん(元デサント社長)だった。

彼が甲府に行った際、ふらりと入った蕎麦屋で食事をしながら、このあと近所でゆっくり呑めるところはどこかないかとたずねたところ紹介されたのが「みかづき」だったのだ。

看板もなく、電話帳やネットにも情報はない

ただ、このスナック、通りに面した外には看板を出しておらず、電話帳やネットにも店の詳細は出していないため、田尻さんは蕎麦屋の女将さんに連れて行ってもらい、何とか入店できたのだが。

爾来、「甲府に秘密スナックがある」と友人間で話題になり、私も興味をそそられて訪ねてみたのだった。初めての訪問時は(後述の「徳川の脱出路」とは真逆を辿り)静岡市での仕事が終わったあと、東海道本線で富士駅まで行き、そこから身延線を北上して甲府駅に至ったのだった。

まずは蕎麦屋に立ち寄り、お約束の女将さんの手引きにより店に辿り着いたのだが、これは独力では探し当てられない……と納得した。秘密スナックである。ドアを開けると端正な店内で、カウンターの奥の酒棚にはウィスキーの「白州」がズラリと並んでいるのが目に入ってくる。南アルプスの山麓、山梨県北杜市にあるサントリーの白州蒸溜所でつくられた地元の酒だ。こういうふうに綺麗に酒の種類が揃った棚というのは気持ちのよいものである。

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