山梨県「人口当たり寿司屋の数全国1位」のなぜ 海なし県ゆえの海産物への憧れだけではない

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「みかづき」のママは光さん。甲府市内で生まれ育ち、高校のあとは市内で住み込みの仕事を始めた。光さんによるなら、当時のその職場は景気が良く、学歴などは関係なく頑張ればそれなりの職場での地位と収入もあったので、仕事に没頭した。

23歳くらいまで、そこに勤めたあと、将来のことを考え資格をとって半年だけ別のところで働いてみたりもしたが、「自分に向いているのは、やはり接客業だな」と思ったという。その後、結婚し、子育てをしながら販売の仕事などもして月日が流れたが、30代後半に自分の店をもとうと思い立ち、2016年2月7日に「みかづき」を開店したのだった。

最初は、先に登場した蕎麦屋のすぐ近くに店を構えたのだが、風俗店が多い場所で治安に難があったため、一年ほどで場所を移り、現在のところでひっそりと看板も出さずに営業している。お客さんは紹介や口コミで来る人がほとんどだという。

ハイボールの作り方も知らなかった

じつのところ、この店、これまで水商売の経験は一度もないところから徒手空拳の出発で、開店したての頃はハイボールのつくり方もわからないほどだったのだ。

お客さんから「ママ、まずは炭酸水を買って来るんだよ」とさえ言われていたくらいと笑って話すのだった。普段の生活では人見知りでさえあるが、「自分の箱」である店に居場所を定めるとお客さんとの会話は楽しく、これこそ自分の天職だと思っている。

光さんは酒が呑めないのだが、それでも、いやそれだからこそ、この商売は楽しいという。一度、彼女と話しているときに「酒の力は恐ろしい」という話になったことがある。カウンターの中からシラフで見ていると、本当にその人の素が酒によって露わになるというのだ。ただ、「チャンとした人は呑んでもずっとチャンとしているのよ」とのことではあったが……。

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