学校に行けないような重症度の高いケースなどでは、もともとの心理的、社会的な要素が絡む場合もあり、身体以外の問題の有無や、その程度に関しては個人差がとても大きい。そうした点では、体への治療を行いながら、個別に心理社会的な要素もいろいろと考え、対応することが大事になってくる。
実は、不登校と起立性調節障害の関係は深いとされ、起立性調節障害のガイドラインには「起立性調節障害の約半数に不登校があり、不登校の子の3~4割に起立性調節障害が認められる」との記載もある。
ただ、永井さんはこれに関しては、「起立性調節障害と不登校に関しての正確な数など不明な点も多い」と述べる。
起立性調節障害の症状が長引く1つの理由は、登校しないで自宅でじっと過ごすことで、体を動かす機会が減るということだ。事実、運動不足は“ディコンディショニング”といって、起立性調節障害を悪化させることもあり、コロナ禍の運動不足を危惧する専門家もいる。
「多くの子は起きるのがつらいだけでなく、倦怠感がある、頭痛がひどいといった体の症状を訴えます。そういう体の症状を伴う場合にどう体を動かしていけばいいか、個人差もありますので、主治医とよく話し合うことが大事です」(永井さん)
体内リズムが崩れ、夜型になりやすい
そして症状が長引くもう1つの理由は、生活リズムの乱れだ。
「起立性調節障害があると体内リズムも崩れやすく、夜型になりやすい。学校に行かなくなるとその傾向はより強まります。朝はできるだけ朝日を浴びて体内リズムをリセットさせるなどのケアが必要で、そのやり方なども医師や看護師などに相談してもいいでしょう」
こうしたことを踏まえたうえで、「その子がより本人らしく元気に過ごしていくためにはどうしたらいいか」も考えていくことが大事だという。当事者やその家族が集う家族会などもあるので、主治医や通っている医療機関の担当者に相談してみてもいいとも言う。
「思春期は心身のバランスの変動に悩んだり、調子を崩したりしがちです。特に登校できないような起立性調節障害の子たちは、思春期の心と体の両方の問題が、ある意味では顕在化している状況ともとらえられます。成長過程の課題的なものだと理解していただき、きっと時期が来ればその課題は解決すると、その子を信じて待つという姿勢でいてあげてください」(永井さん)
(取材・文 /山内リカ)
永井章医師
1989年大阪医科大学卒業。2018年国立成育医療研究センター総合診療部総合診療科診療部長。日本小児科学会指導医・専門医、子どものこころ専門医・指導医、日本心身医学会専門医、日本小児心身医学会認定医・指導医。
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