だが、そうではないときに手や足、脇、顔などに大量の汗をかき、生活に支障が出るのが「多汗症」という病気だ。2013年の全国疫学調査では、7人に1人はいるとの報告もある。今回は多汗症の病態と治療、さらに上手な汗との付き合い方について、多汗症治療の第一人者、横関博雄医師に聞いた。
熱々のラーメンや激辛カレーを食べると汗で髪がぐっしょり、更年期で滝汗が止まらない、プレゼンの緊張で手汗がひどい……。こんな経験はないだろうか。なかにはタオルが手離せなかったり、水分を控えていたりする人もいるだろう。
多汗症は汗っかきとは違う?
そもそも、これらの汗は病的なものなのだろうか?
「発汗は体温調節のために必要です」と横関医師は言う。
「興奮や緊張などで交感神経が優位になると汗が出る『精神性の発汗』も、誰にでも起こります。ですが、こういった生理的に汗をかく状況ではないときに異常なほどの汗をかき、それで生活に支障が出る場合は、『多汗症』を疑います」
多汗症は大きく以下の2種類に分けられる。
1つは原因がはっきりしている「続発性多汗症」だ。全身に大量の汗をかくときは、甲状腺機能亢進症やパーキンソン病などの神経疾患、あるいはホルモンバランスの乱れによる代謝異常が、部分的に汗をかくときは脳梗塞などの疾患が疑われる。
もう1つは「原発性局所多汗症」。原因がわからないのに、手のひらや足の裏、脇などにしたたるような汗をかくタイプだ。
東京医科歯科大学の藤本智子医師らが2013年に全国の5807人に実施した「日常起きているときに汗のため生活に支障を来たすことがあるか?」というアンケート調査では、7人に1人が「ある」と回答。多汗症の有病率は25~29歳がピークだが、子どもから高齢者まで幅広かった。部位別では手のひらが5.3%、脇が5.7%、足の裏が2.7%だった。
横関医師は東京医科歯科大学で多汗症外来を開設していたが、外来を受診する患者が訴える“具体的な困りごと”はどんなことか。
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