③抗コリン薬内服療法
アセチルコリン受容体と結合して、発汗を抑える。プロパンテリン臭化物(プロバンサイン)という薬が使われている。最近は、後述する外用療法が無効なときに使用されている。複視や便秘、排尿障害などの副作用に注意が必要。
④抗コリン薬外用療法
抗コリン作用で汗を抑える外用薬。ソフピロニウム臭化物(エクロックゲル5%)と、グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォートワイプ)が新しく保険適用となった。
ソフピロニウム臭化物はエクリン汗腺(2種類ある汗腺の1つ)の発汗を抑える塗り薬タイプの抗コリン薬で、1日1回、汗の出る場所に塗る(入浴後が勧められる)。日本で開発された薬で、副作用が出にくい。グリコピロニウムトシル酸塩水和物は抗コリン薬が染みこんだ不織布で、入浴後に両脇を拭く。1回使い切りタイプ。
基本的に、外用療法を患者さんの症状やライフスタイルに合わせて、使ってもらっているそうだ。
「ソフピロニウム臭化物は、効果はマイルドですが副作用が少ないので、軽症から中等症の高齢者に適しています。グリコピロニウムトシル酸塩水和物は、中等症から重症までの活動的な若い人が使いやすいです」
「患者さんを診ていると、手足の発汗量は季節であまり変わりませんが、脇は夏のほうが温熱刺激を受けやすく、汗が多いです。これからの時期は外用剤をしっかり使用したほうがいいでしょう。逆に汗をかきにくい冬は一時的に中断してもいいと思います」(横関医師)
なお、1つ知っておきたいのは、こうした治療は対症療法であり、中断すると再発する。
汗をかきやすい人のセルフケア
最後に、横関医師に汗対策について聞くと、「汗が気になる手や脇などをタオルでこまめに拭きましょう。最近では速乾性の優れた素材の衣類が出ていますので、それらを選ぶのも有効です」とアドバイスする。
実は、市販の制汗剤には前述した塩化アルミニウムが配合されているものがある。これらを使うと効果が期待できる。
「一方で、汗を気にしすぎると交感神経が優位になって、さらに発汗するという負のスパイラルに陥ります。“他の人より少し汗っかき”ぐらいに考えて、過敏になりすぎないことが大切です」(横関医師)
(取材・文/熊本美加)
東京医科歯科大学名誉教授、横関皮膚科クリニック院長
横関博雄医師
1980年、徳島大学医学部卒業。1986年、大阪大学医学系研究科皮膚科学博士課程修了。2005年から東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野主任教授、2021年から東京医科歯科大学名誉教授、東京医科歯科大学皮膚科特任教授。現在、香川県でクリニックを開業。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー指導医。
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