舞台裏の「制作過程を見せる」モノが売れる必然 注目される「プロセス・エコノミー」とは何か?

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ビジネスにおいてナラティブが注目されるようになったのは、企業が決められたストーリーを語るよりも、ユーザーと対話をしながら自由に語ることに価値が見いだされてきたからといえます。

2022年、人気スマホアプリゲーム「ウマ娘プリティーダービー」と、サントリーのコーヒー「BOSS」がコラボキャンペーンを実施しました。そのとき、サントリーの商品企画担当が「BOSS 担当者の想い」という文章を発表し、大きな話題となりました。

企業の公式なメッセージ以上に重視されるもの

「BOSS 担当者の想い」は、コラボ企画が実現するまでの経緯や、コラボ企画への熱い想いをしたためたものであり、1万字を超える長文です。

企業がリリースしがちな定型的な文章とは異なり、自分自身がゲームに夢中になり、ウマ娘の世界にどっぷりハマっていったエピソードが綴られていて、その思い入れの強さがウマ娘ファンからも好意的に受け止められたのです。これなどは、ナラティブの成功例の一つといえます。

別の例を挙げると、「よなよなエール」などのクラフトビールで知られるヤッホーブルーイングが、2022年8月に低アルコール飲料「正気のサタン」を発売した際の紹介ページも反響を呼びました。

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掲載された文字数は、なんと2万4955文字。単に商品の魅力や素晴らしさを語るだけでなく、開発までの苦悩や試行錯誤を赤裸々に語っているところがユニークであり、注目を集めたポイントでもありました。

日本では、すでにノンアルコール・低アルコール飲料市場が確立されており、ヤッホーブルーイングは後発参入の企業でした。ありきたりのマーケティングでは、既存の商品に対抗するのは至難の業です。そこで発信されたのが、長文の開発秘話だったというわけです。

サントリーとヤッホーブルーイングの事例に共通するのは、企業の公式なメッセージではなく、個人的な想いが多くの人の心に響いたという点です。

企業も個人の想いの重要性に気づいており、担当者の自由な発信を応援しようとする傾向が見られつつあります。ぜひ個人的な物語を積極的に語るべきです。

村上 臣 LinkedIn(リンクトイン)日本代表、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教員、ポピンズ社外取締役、ランサーズ社外取締役

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むらかみ しん / Shin Murakami

青山学院大学理工学部物理学科卒業。大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。2000年8月、株式会社ピー・アイ・エムとヤフー株式会社の合併に伴いヤフー入社。2011年に一度退職した後、再び2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月に8億人超が利用するビジネス特化型ネットワークのLinkedIn(リンクトイン)日本代表に就任。日本語版のプロダクト改善、利用者の増加や認知度向上に貢献し、2022年4月退任。株式会社ポピンズ 及び株式会社ランサーズの社外取締役ほか複数のスタートアップの戦略・技術顧問も務める。

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