健康茶にステロイド、「花粉症」民間療法の危うさ 監視には限界、有効性の評価・検証も進まず

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過去には、2010年に厚生労働省の研究班が花粉症の民間療法について調査している。研究メンバーだった、日本アレルギー学会専門医の岡本美孝・千葉労災病院院長は「(お茶のような)民間療法に効果がないということを証明するのは難しいため、効かないとは言えないが、基本的には薬での治療をおすすめしている」と話す。

当時、アレルギー性鼻炎患者の約2割の人が、甜茶やヨーグルトなどの民間療法を花粉症に効果があるとして取り入れていたという。岡本氏は、甜茶を飲んだ人とそうでない人を比較した調査にも関わったが、花粉症への効果がなかったと結論づけた。

ただ、民間療法が本当に「効く」かどうかを調べようとする研究者は現状少ない。「お金も時間もかかるうえ、調査する動機が強くない」(岡本氏)からだ。

普及へのハードルが高い根本治療薬

監視の目が行き届かずに関連調査も進まない以上、花粉症対策をうたった人気商品の中に、今回のジャムー・ティー以外にも危険な商品が紛れ込んでいる可能性は排除できない。それでも多くの消費者が民間療法にすがる背景には、現在の花粉症の治療薬に「100%治す」ものが存在しないことが関係していそうだ。

一般的に花粉症の薬として処方されるのは、抗ヒスタミン薬という対症療法薬。薬局で購入できる市販薬も、このタイプだ。花粉シーズンに飲めば症状が和らぐが、花粉症を根本的に治す効果はない。また、症状の重い人では効かないこともある。

一方、根本治療につながる可能性があるとして、最近出てきたのが「舌下免疫療法」だ。

舌下免疫療法は、スギのアレルギー源を体内に少しずつ取り込むことで抗体を作り、症状を和らげる仕組み。うまくいけば、根本治療も期待できる薬だ。

ただ1日1錠を3年ほど飲み続ける必要があるうえ、花粉シーズンに服用を開始することができない。処方できる医療機関も限られるため、一般的な認知は広まっていない。政府が4月14日に開いた花粉症に関する関係閣僚会議の初会合では、舌下免疫療法などの普及に向けた環境整備が、今後の対策の3本柱の1つに挙げられた。

現在は簡単に服用できる免疫療法が研究されているが、実用化はまだまだ先だ。最近登場した、より重症患者向けの「抗体療法」は、人によっては月の負担額が数万円ほどにもなる高額な薬で、これもまた普及に課題が残る。

厚労省によれば、花粉症の有病率はこの10年で10%以上増加しているという。“国民病”にかこつけた悪徳な商品が出回ることを防ぐためにも、治療法の研究支援と監視強化という両面での対策が必要ではないだろうか。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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