健康茶にステロイド、「花粉症」民間療法の危うさ 監視には限界、有効性の評価・検証も進まず

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特定の病気への効果や効能の記載は法律上、医療用医薬品にしか認められていない。厳正な試験に基づいたデータでの裏付けが必要となるためだ。

ところがジャムー・ティーの商品パッケージには、花粉症への効果があることがうたわれていたほか、「一日1~2回、食間にお飲みください」「効果が出たと感じたら、飲むのを止めます」などと、医薬品のように摂取量を制限する記載があった。

ジャムー・ティー・ブラックを販売していた香塾の謝罪文
健康茶の販売業者が掲載した謝罪文。自社内でステロイドが混入した可能性については否定している。傍線は編集部(画像:香塾の公式HPより)

ただのお茶であれば、摂取量を管理する必要はないはず。商品の包装・販売を行っていた香塾はホームページ上で「弊社内において混入することは考えられない」と釈明し、ステロイドが混入した経緯については調査中としている。

国民生活センターが調査のために購入したジャムー・ティーには、小さじ2杯当たり「医薬品で1日に最低量とされる量の約35分の1」のステロイドが含まれていたという。とはいえ食品では一般的に、薬のように製造過程で厳格な管理体制が敷かれているわけではない。そのため他の個体での含有量が同一とは限らない可能性がある。

ステロイドは肥満、血糖値や血圧が高くなるといった副作用があるほか、急に服用をやめると離脱症状が出るため、医師の下での厳格な管理が必要だ。大久保医師は、飲用をやめて身体に異変がある場合、医療機関を受診することを勧めている。

民間療法の成分調査は「キリがない」

ステロイド混入の発覚のきっかけは、医師からの通報だった。

ジャムー・ティーを飲んでいた13歳の女性が別の疾患で通院していたところ、副腎皮質ホルモンなどの検査値が低かったことから、摂取を中断。その後数値が改善したため、医師が国民生活センターに通報した。食品に医薬品混入の可能性が疑われるような情報で同センターが注意喚起をしたのは、約10年ぶりだという。

そもそも、行政主導での民間療法の実態をめぐる調査は積極的に行われていない。数多くの商品が存在し、すべてを監視することは現実的に難しいからだ。

1つの商品から医薬品成分の混入を調査するにも、それなりの労力を要する。例えばステロイドだけでも数十種類が存在し、どの成分かを特定するまでには時間も費用もかかる。国民生活センターは今回、目星をつけた5種類のステロイドで検査をしており、ある職員は「判明したのはラッキーだった」と話す。

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