【産業天気図・建設機械】当分続く世界的な建設機械ブームを享受
建設機械業界は現在、世界的な需要急増で、「我が世の春」を謳歌している。
戦後、建設機械業界は国内需要が低迷した場合、輸出を中心とした海外を伸ばしながら国内需要の回復を待つことで増益基調を維持してきた。ところが、この国内需要の主体である建設投資は公共事業の削減という政府の基本方針のために、1996年度をピークとして年々減少傾向に転換してしまった。加えて、海外市場も低調だったことから、90年代後半はまさに「どん底」で、各社は工場閉鎖やリストラの嵐に見舞われた。
ところが、2000年に入ると様相が一変した。理由は米国と中国の景気拡大。米国で住宅投資が牽引したほか、中国で不動産開発が急増。このため、日本のオリジナルに等しい多機能建設機械の代表・油圧ショベルの需要が爆発した。建設機械出荷金額も2001年を大底に回復に向かうが、その牽引車となったのは輸出だった。また、当初は住宅投資や不動産開発向けの建設機械需要が強かったが、ここ数年は資源開発関連の大型建設機械に対する需要が急激に伸びている。この背景について、コマツの坂根正弘社長は常々「原油価格の上昇時は1次産品が全体に上昇する時で、資源国の資源開発が活発になる」と指摘していたが、実際、今回の原油価格の上昇が始まった2000年ごろから世界的な建設機械需要が急増している。
しかし、現在の建設機械業界にも不安材料はある。一つは重要資材である鋼材価格の上昇だ。ここ1~2年、鋼材価格は原料である鉄鉱石の値上がりを受けて上昇。鋼材使用量の多い自動車、造船、機械各業界の原価を圧迫してきた。このため各業界では最終製品価格への転嫁に向けた努力を続けてきたわけだが、建設機械も同様だ。しかし自動車業界に比較して交渉力は強くないことから、価格転嫁の進捗は遅い。ただ、世界的な建設機械需要の強さはそれを補って余りある状態で、各社の業績は増益基調を維持している。2006年からEUで第3次排ガス規制が導入されるが、コマツを始めとした大手建設機械メーカーは、規制対応の新型エンジンを搭載した新製品を逐次投入する方針だ。
もう一つの不安材料は、国内での生産余力の問題だ。各社とも90年代の建設機械不況に対応して生産能力を絞ってきた。このため現在のような超繁忙状態の下、生産余力は乏しくなっている。コマツでは新規の工場建設が焦眉の急で、年内にも適地を確保し、新工場建設を開始する予定だ。
こうした原価面や生産設備面での不安はあるが、受注面では全く問題はない。一つは米国。懸念されていた過熱気味の住宅開発は、今後減速に入る可能性は少なくない。しかし、ここへきて新たに過去最大の道路予算が議会を通過している。2004年度から09年度までの6カ年計画で、その規模は2864億ドル。前回の6カ年計画比では30%増になる。また、先ごろ南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」の復興予算も上乗せされる。中国は北京オリンピックを控えて建設ブームが始まろうとしているうえ、資源開発などの途上国需要も衰える可能性は少ない。
【日暮良一記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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