音楽がデジタル化で本当に失っているもの ヒット曲が出にくいのには、ワケがある!

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縮小

とはいえ、日本では音楽デジタル配信が音楽パッケージ商品の落ち込みを補っているワケでもない。日本レコード協会によると、2014年の有料音楽配信市場は436億円。前年から拡大したものの、伸び率は5%。初めて集計した2005年の342億円と比べるとこの10年弱で100億円ぐらいしか増えていない。つまり、日本の音楽ソフト市場は全体的に縮小してしまっているのである。

一方、日本人の音楽に対するニーズや熱が極端に下がったとも言い切れない。毎年多くの新人アーティストがデビューし続けているし、過去のスタンダード曲は変わらず愛されている。ロックフェスティバルの活況に見られるように、ライブ市場はジワジワ拡大。カラオケ業界も音楽ソフトビジネスと比べると決して低調ではない。

デジタル化で音楽コンテンツの作り方が変容

なぜ、ここまで日本の音楽ソフトは元気がなくなっているのだろうか。実は「音楽のデジタル化」を、これまで取り上げてきた流通、つまり「届け方」とは別の観点でとらえると、違う姿も見えてくる。着目したいのはコンテンツの「作り方」だ。

音楽業界の不況はコンテンツの作り方に大きな変化をもたらした。制作予算が圧迫され、作曲家、編曲家、ミュージシャンなどその道の優れた「職人」達を起用した作品が徐々に減少していった。そこで訪れたのが、「打ち込み」と呼ばれるDTM(デスクトップミュージック=コンピューターの音源で作られるサウンド)の全盛期だ。

もともとコンピューターで作られる音楽コンテンツは、「YMO」や「TM NETWORK」などに代表されるように、シンセサイザーでないと表現できない音を作る際に用いられていた。それがコンピューターのハード・ソフトともに劇的に機能が進化した結果、DTMはあらゆる楽器が奏でる音を精巧に表現できるようになった。音程や音質も自由自在に操れる。緻密な編集作業がいくらでも可能になった。

その結果、DTMアプリケーションをオペレート(操作)する技術さえ身につければ、楽器に触れたことがなかったとしても、譜面上の完璧な音程とリズムを生み出すことが可能になる。さらには録音された人の声や楽器の音色も、後処理によっていくらでも修正でき、少々歌唱や演奏の技術が甘くても、音源上は十分に「歌手」としてデビューできるようになった。

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