改革できず悩む日本企業に教えたい成功9ステップ 国際競争を勝ち抜く戦闘力を上げるための処方箋

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●第7ステップ:「現場への落とし込み」と「具現化力不足の壁」

第5ステップから「説得性不足の壁」を乗り越えることができた改革は、次に社内各部署それぞれのアクションプランに落とし込まれなければならない。

ラインを巻き込んで、具体的行動計画が部署ごとに作成され、改革効果を測定する何らかの基準(KPI)が示される。それが明らかになれば、話は自然に「目標とその期限」の設定に向かう。

改革シナリオに対して総論で賛成だった人々が、この段階までくると各論で反対に回ったり、実行案の細部を曖昧にして骨抜きにしたりするなど、政治性を帯びた行為が出てくる。ここに、改革の「具現化力不足の壁」がある。それを越えるには次の能力が必要である。

① 現場への緻密な落とし込み能力
② 燃えるリーダーシップ
③ 社内の政治的軋轢を処理する能力

改革リーダーたちが、この段階で遠慮や迷いを見せれば、改革は初速を失いかねないから、一度走り始めたら、何が何でも「具現化力不足の壁」を突破しなければならない。

●第8ステップ:「実行」と「継続力不足の壁」

第8ステップは「実行」である。何と、ここまで七つものステップをクリアしてこないと、改革は実行段階に入れないのだ。

ここから先は、愚直に行動、行動、行動の繰り返しだ。集中すべきと決めた範囲に限定して革新的手法を試行し、うまく行ったら対象を広げて水平展開するというやり方を繰り返す。見かけは大きな改革でも、実行面では短い時間軸の局地戦を精力的に繰り返していくのである。

日本企業の改革がなまくらになりやすい理由は、「突出部分」で「一気呵成の勝負」というアプローチから逃げたがるからだ。ここには「継続力不足の壁」がある。それを越えるには、

① もともとのシナリオや改革の意味を社員に繰り返し思い出させる
② Early Success(早期の成功)が皆に見えやすいように実行計画を組む
③ 熱くて継続力のあるリーダーを上に立てる
④ いつまでもネガティブな行動をとり続ける社員がいたら、断固として排除する

実行段階では、やってみたけどうまくいかないことがいろいろ出てくるのは当然だ。もし基本的アプローチに間違いのあることが分かったら、第7ステップのアクションプランまで戻らなければならない。

●第9ステップ:「成果の認知」と「達成感不足の壁」

改革に成功したら、改革チームの努力は正当に認められなければならない。たとえ失敗でも、その経験者は貴重な人材だ。

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ここには「達成感不足の壁」が待っている。アメリカのような、金まみれのインセンティブを用意することは主張しない。

しかし日本企業では、リスクをとった者への報酬が不当に低いことが多すぎる。会社全体を救うために生きるか死ぬかの勝負をさせたのに、改革メンバーと宴会を開く程度で終わらせたり、改革メンバーが人事処遇面でも報われなかったといった話を聞く。

日本企業でいわゆる企業家的サムライが減ってしまい、経営者的人材の枯渇が進んだ現実は、そうしたことと深い関係があると思う。

最後に、実はこの9つのステップは事業改革だけでなく、個人のビジネスの行動や普通の人の生活行動にも当てはまる。つまり、この「成功9つのステップ」は普遍的な人間行動の押さえどころを示している。

これらのステップをきちんと繰り返すたびに、人は経験と技量を高めていくのである。

三枝 匡 ミスミグループ本社名誉会長・第2期創業者

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さえぐさ ただし / Tadashi Saegusa

一橋大学卒業、スタンフォード大学MBA。20代で三井系企業を経て、ボストン・コンサルティング・グループの国内採用第1号コンサルタント。32歳で日米合弁会社の常務、翌年社長就任。次いでベンチャー再生等二社の社長を歴任。41歳から事業再生専門家として16年間不振事業の再生に当たる。2002年、ミスミCEOに就任。同社を340人の商社からグローバル1万人超の国際企業に成長させ、2021年から現職。一橋大学大学院客員教授など歴任

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